
愛すると言う事…
第1章 episode 1
気付いたら…
見知らぬ部屋に居る。
慣れた感触とは違うベッドの中。
見た事もない天井と壁の色。
…どこだ?
身体を起こせば、金槌で殴られた様な激痛が頭を襲った。
智「…痛っ!」
完全に飲み過ぎた。
頭を抱えて夕べの事を一気に思い出す。
思い出したら、着ていたはずの服が俺の身体に無い事に気付いて。
ベッドの側にあるサイドテーブルに、キッチリ畳まれた俺の服が目に入った。
ジーンズに足を通して、Tシャツを手に部屋を出たら、あり得ない程の広さのリビングだった。
翔「おはよう」
コーヒーを片手に新聞を広げてる翔さんがソファにゆったりと座ってた。
智「………はよ」
頭を押さえてソファまで近付くと、変わりに翔さんが立ち上がりリビングの向こうに見えるキッチンに向かう。
すぐに戻って来た翔さんが持って来たのは、水と薬と…コーヒー。
翔「飲み過ぎだな(笑)」
微笑む翔さんは、朝から俺を殺そうとする。
智「…笑うな」
呟いた俺に、小さく声を漏らして笑った。
智「……そのうち、俺死ぬ」
翔「はは(笑)二日酔いくらいじゃ死なねぇよ」
智「…違う。……あんたが笑うと心臓があり得ないくらい動く。……心不全か何かで死ぬ」
真顔でそう言って、渡された薬と水を飲み下す。
ソファの背凭れに身体を預けたら、隣に座った翔さんがニヤリと不適な笑みを浮かべてた。
翔「お前、女は?」
智「…は?」
翔「彼女、居ないのか?」
智「…居ねぇよ。出来た事も無いし、興味もない」
翔「……なるほど」
『…何だよ』って言葉は、発する事なく喉の奥に消えていった。
隣の翔さんがジーッと見つめてくるから。
フワリと腕を伸ばした翔さんが『俺も、"男"は無いと思ってた』なんて、意味不明な事を囁いて。
俺の頬を包んだと思ったら、ゆっくり優しく撫で始めた。
背筋が、ゾクッとする。
だけど大きな瞳で真っ直ぐに見つめられ、俺は目を逸らす事が出来なかった。
身動き一つ出来ず固まる俺に、翔さんが頬を撫でながら親指で唇をゆっくり撫でてくる。
ピクリと、肩が震えた。
翔「……悪い。…我慢出来ねぇわ」
ビックリする程の至近距離で囁いて、目の前のプックリと少し厚めの唇が俺のそれに、触れた。
