
愛すると言う事…
第9章 《distrust》
週末ともなれば、客足が増え彼らは一際忙しくなる。
そんな今日も、例外ではなく。
指名される度に、席を移動しなきゃならないからホストのみならず、ヘルプたちも場を繋ぐ為に必死だ。
お目当てのホストが来るまで退屈させてしまえば、睨まれるのはヘルプだから。
そんなフロアを、何事もないかと目を光らせるのがマネージャー。
同伴してくる奴らがちゃんと出勤してくるのを確認するのが、俺の仕事。
週末の今日は、翔さんが頻繁にフロアに出て客に挨拶して回る日でもあった。
開店して一時間。
同伴して来た侑李さんを見つけた。
隣でマネージャーも『侑李来たね♪』と呟いた。
健人とあまり馬が合わない侑李さん。
翔さんが席を回るのを目で追ってた。
ある席で足を止め挨拶をしてはいるけど…
何故、座った?
挨拶回りをしてる時、翔さんは絶対に席に着く事は今まで一度もなかった。
指名したホストも、付いてるヘルプも。
その席の連中は皆楽しそうに笑ってて。
客の女に腕を組まれ笑ってる翔さん。
何か、ちょっと…ヤバい、かも。
静かに立ち上がった俺に気付いたマネージャー。
苦笑いされた。
それでも、あんな楽しそうな翔さんを、見てられなかった。
事務所を出て一旦トイレに入る。
健「……あれ?…智さん♪」
健人が居た。
手を洗う健人の脇を通り用を足した。
…けど。
何故か健人はトイレから出ようとしない。
不思議に思いながらも用を済ませ手を洗う俺を、ジッと見つめて来てた。
健「……智さん、翔さんと付き合ってるって…本当っすか?」
智「………」
あぁ。
俺が初出勤の日、恥ずかしいって文句言ってから、翔さんは宣言するのをやめたんだっけ。
だからここ最近入った奴らは知らないらしい。
健「否定も肯定もしない(笑)?」
智「…………何か、関係あんのか?」
健「え?」
智「…お前に、関係あんの?」
そう聞き返した俺に、健人の表情が変わった。
ヤバい…
根拠はないけどそう思った。
さっさと出ようとする俺に、ジリジリと近付いてくる。
健「智さんって、綺麗っすよね♪」
厭らしい笑みを浮かべるこいつに、俺は嫌な予感しかしなかった。
ドアは、健人の傍にある。
後退る俺の背後は、壁。
こんな体じゃなかったら…
今すぐ、健人の横をすり抜け出ていける。
だけど…
