
愛すると言う事…
第9章 《distrust》
目の前に立たれて、もう俺はここから出る術を失った。
智「…………興味、あるのか?」
健「………」
智「……試してみるか?」
強気に出てみたけど、俺は内心かなり焦ってた。
本気にされたら?
以前の様な体なら、どうにでも抵抗出来る自信はある。
今のこの体じゃ恐らく、抵抗したところで無駄だろう。
頬に手を添えられた。
ゆっくりと、健人の指が俺の唇を撫でてる。
どうする…
ただ、健人を見つめたまま必死で考えた。
近付く健人の顔。
斗「……何してる。健人」
直前。
正に後数ミリで、マネージャーがドアを開けた。
俺の心臓が、壊れそうな程の動きをしてる。
斗「さっさと戻れ。……この店に残りたいなら、二度と智くんに手出すな」
マネージャーの低い声に、健人はニヤリと笑いトイレから出て行った。
斗「大丈夫!?智くん!」
智「……はい、すいません」
斗「全然戻って来ないから…」
智「…………あの。……翔さんには、言わないでください」
斗「いやでも!智く「…お願いします」」
小さく頭を下げた。
マネージャーがジッと見つめては大きく溜め息を吐き出し仕方ないと頷いてくれる。
『…ありがとうございます』ともう一度頭を下げた。
智「……んぁ………しょ、さ…」
翔「…ハァ…智…」
帰って来てシャワーを浴びた翔さんは、言葉少なに俺をベッドに連れて。
今、ベッドの中。
見下ろす翔さんの瞳が、不安気に揺れてる気がした。
多分、俺がフロアで見てた事を知ってて。
席に着いて客と楽し気にしてた事を、翔さんなりに気にしてるんだと思う。
言葉にしない俺より先に、こうして翔さんの身体全部で愛情を示してくれてるんだと分かれば、モヤモヤした感情も溶けてなくなるから。
何度も名前を呼んで、俺は大丈夫だと、首元に腕を絡めてキスをする。
嬉しそうに微笑み抱き締められ。
スパートを掛けられた。
翔「……大丈夫か?」
智「…………ん」
頭を撫でて裸のまま抱き締める翔さん。
素肌が直接触れ合う感触は、汗ばんでても嫌いじゃない。
翔「…今日、何かあったのか?」
智「……………え?」
翔「帰り際斗真が何となく元気なかったから」
智「……あぁ………いや」
焦った。
一瞬バレたのかと思ったけど、あの人はそんな事しないだろう。
翔さんの怖さを知ってるから。
