
愛すると言う事…
第9章 《distrust》
あれから健人が俺に近付いてくる事はなかった。
控え室に顔を出し、今年もまた慰安旅行の時期だと告げ日程の詳細が書かれた書類を従業員に配った。
涼「……お、今年はグアム?」
智「…………翔さんの希望です」
侑「へぇ♪……翔さんって南国好きなんだね(笑)」
居ない所で笑われてる。
確かに、俺もそれは思ってた。
俺が初めて行ったのも、ハワイで。
翌年はオーストラリア。
熱い国ばかりだ。
たまには従業員の意見も聞いてやればいいのに…
智「……まだ、行き先は変更可能だから…」
涼「はは(笑)…いいじゃん、グアム♪なぁ?」
侑「俺好きだよ?南国♪」
健「………俺はヨーロッパとかの方がいいけど」
ぼそりと、溢す様に言ったのは健人。
俺が視線を向けても、健人が俺を見る事はなく。
『……一応、言っておく』と声を掛け控え室を出た。
まだ、行き先は決定してない。
一応の予定で渡しただけの話だから、従業員の希望が別の場所ならと、翔さんもマネージャーも言ってた。
翔さんに後で伝えておこう。
そう思いながら事務所に戻った。
翔「お疲れ。……ちょっと光一の店行ってくるわ」
斗「分かりました」
智「…………何か、問題でも?」
翔「いや。…暫く見に行ってねぇから、たまにはな?」
智「……そう」
翔「一緒に行くか?」
智「…あー………いや、いい」
潤に、久し振りに会ってみたい気もする。
だけど今日は何となく気分が乗らないし、若干気怠さを感じてた。
翔さんに気付かれない様に『…潤によろしく言って?』と小さく笑うと、頭を撫でて出て行った。
閉店まで後二時間。
気怠い…
そんな感覚を誤魔化す様に事務所で仕事をしてた時。
マネージャーがシゲさんに呼ばれ本事務所へ向かった。
フロア内は今日も問題なく賑やかそうだ。
頬杖を付いて、小さく息を吐き出すといつもより熱い気がして。
マズいな…
もしかしたら、風邪でも引いたかもしれない。
帰ったら素直に翔さんに言わないと…
そう思ったら、無理したって怒るんだろう事が想像出来て笑ってしまった。
健「…………楽しそうですね♪」
背後からの声に、マネージャーではないと気付き肩を震わせる。
振り返る前に、カチャリ…と鍵の音を聞いた。
あぁ…
最悪だ…
