
愛すると言う事…
第9章 《distrust》
翔「……じゃあな。また来るよ」
一通り光一の店を眺めて、売り上げを確認した後そう声を掛け店を出ようとした。
そこで見つけた、智の唯一心許してる友人、潤。
翔「……久し振りだな?」
潤「翔さん。お久し振りです」
翔「元気そうだな?……智がよろしく言っといてくれって言ってたぞ?」
嬉しそうに笑う潤。
智に告白した後、何度か二人で飯を食いに行ったりしてる。
それでももう、潤は吹っ切れてるらしく俺が心配する様な雰囲気も感じられないから。
潤「またお邪魔しても?」
翔「もちろん。…智が喜ぶ」
潤「ふふ(笑)…智が幸せそうで、嬉しいですよ♪」
心底そう思ってくれてる様で、智にこんな存在が居るって事が俺にとっても嬉しいと思える。
『じゃあ…』と店を出て、車を走らせた。
もう少しで店に着くと言う頃、赤信号に捕まった。
車内の洋楽が微かに流れる。
そう言えば、この曲…
智が気に入ってたっけ。
口にした訳じゃないけど、この曲が流れると智の表情がふっ…と緩んでる事を、つい最近気付いた。
ポケットの携帯が音を立てたのは、信号が青に変わってすぐ。
路肩に止め、通話を押した。
翔「…はい」
斗『翔さん!!すぐ戻って!!』
斗真の叫ぶ様な声に、俺の心臓が跳ねた。
店で何かあったのか?
いや、あの焦り様…
智か?
返事をする事なく携帯を助手席のシートに投げ、アクセルを目一杯踏み込んだ。
何があった?
智は確かに気怠そうだった。
熱?
いや、斗真がそのくらいの事であんなに焦ったりしねぇ。
ハンドルを握り締め、店までを急ぐ。
着いてすぐ、従業員入り口から中へ駆け込んだ。
入ってすぐシゲを見つけ。
シ「すいません!翔さん!」
翔「んな事いい!何があった!?」
シ「智が…健人に…」
翔「健人!?」
事務所のドアの前に、斗真を見つけた。
振り向いた斗真は泣きそうな、だけど怒りを含んだ顔で。
鍵が掛けられ開かないと言う。
斗真は本事務所に居た。
事務所の鍵も全ての持ち物も、事務所の中にある所為で開けられないと。
シゲもまた今日に限って事務所の鍵を持っていないと言う。
舌打ちしながら、ポケットの中から鍵を取り出し開けた。
開けたドアの先。
そこら中に、書類らしき紙切れが散らばって。
智が、壁際に押さえ付けられ…
翔「……何、してる」
