
愛すると言う事…
第1章 episode 1
目を見開いた俺。
翔さんの閉じられた瞼は、長い睫毛が綺麗だった。
頭の中はそんな呑気な事を思ってて。
離れた翔さんは艶やかに微笑み俺の額に、また一瞬だけその唇を触れさせた。
もしかして…
これ、キス……ってやつか?
え?
マジか。
俺のファーストキス…
………男…?
瞬きを何度も繰り返し、翔さんをただただ見つめてた。
フワリと微笑んだ翔さん。
翔「顔、真っ赤だな(笑)」
智「……うるせぇ///」
それだけで精一杯だった。
訳が分かんない。
何だろう、この感情。
こんなの知らない。
心臓が、昨日の数倍の早さで動いてる。
呼吸も儘ならない程。
胸を鷲掴み必死で苦しみを逃がす。
智「……ヤ、バい……苦、し…」
翔「………」
智「…俺、死ぬ……かも…」
翔「死なねぇよ。…落ち着け、っても無理か。悪かったな?」
フワリと頭を撫でてすぐ、温かい腕の中に包まれた。
背中をゆっくり撫でられて、翔さんのと思われる香りが全身を包み込む。
でもそれは、この間嗅いだ香水とは違う。
多分、翔さん自体の香りだろう。
優しくて爽やかな、何故かホッとする香りに少しずつ心臓が落ち着きを取り戻していった。
翔「大丈夫か?」
智「…殺そうとしてんの?」
翔「だから。…こんな事で死なねぇし、殺そうとも思ってない。寧ろ、逆だ」
智「………」
翔「まぁ…そのうち分かるさ♪」
頭を撫でるその手は、ばあちゃんみたいに優しく温かかった。
馬鹿デカい翔さんのマンションを出て、歩いて帰った。
送ると言われたのを断り、歩き出したのはこれ以上一緒に居たら心臓がもたない気がしたから。
帰ってすぐシャワーを浴びて。
その後、学校に行って教室に顔を出したらまた屋上に向かう。
そしたらやっぱりアイツが来た。
二宮和也…
一方的に話し掛け続ける男。
それでも満足そうなのは何故だろう。
コイツの話はほとんど聞き流してた。
それほど、これと言った内容じゃない話だった気がする。
だから俺の頭の中は、今朝の出来事で一杯だった。
あの男は、一帯何がしたいのか…
何を目的としてあんな事をしたのか…
俺にはサッパリだ。
