
愛すると言う事…
第9章 《distrust》
ソファに寝ていたはずの智は、起き上がり座っていた。
ただ、熱の怠さからか項垂れる様に座ってる。
俺は健人を智の前に突き出し。
傍の壁に寄り掛かり腕組みをし、二人の様子を見守った。
顔を上げた智が、小さく目を見開き俺へ視線を向けてくるから、真っ直ぐに見つめ返し大丈夫だとその瞳に訴えた。
健「……智さ「…ごめんな?…健人」」
声を出した健人に被せる様に謝罪を口にする智。
俺は思わず、小さく息を吐く。
智は、やっぱり智だ。
智「………俺が、ちゃんと言わないから……健人に、期待持たせる様な事した」
健「……智さん」
智「………」
健「分かんなかったんですよ。確かめたかった。…自分の、気持ち。けど、智さんに触れてみて分かりました。……智さんが好きです、俺」
俯いた健人。
智は怠い体で何とか立ち上がると、健人の目の前に立ち、頭を撫でた。
智「………ありがと………健人の気持ち、嬉しいとは、思う」
健「………」
智「……だけど、俺には………翔さんしか、居ない。…何があっても、俺がどんなんでも。……翔さんは俺を見捨てないから」
そう言って小さく小さく、微笑んだ智。
健人は頭を撫でられたまま、『…すいません、でした』と、頭を下げた。
『…ありがと』と、また小さく呟いた智はもう限界で。
俺は智の傍に近付きその細い体を支えた。
見つめてくる智の瞳が熱の所為で潤み、これは別な意味でヤバい。
顎に手を添え見つめると、智は"やめろ"と訴えて来る。
翔「ふっ(笑)……悪い、智。…もうしねぇから」
智「…馬鹿やめ、」
言い終える前に、目の前の唇に俺のを重ねた。
人前での行為は、最初で最後だから。
ツルリと舌を差し込むと、やっぱり熱くて。
背中に回された智の手が、俺の服を掴む。
端から見れば、しがみ付いてる様に見えるそれは、智の必死の抵抗だ。
あんまり続ければ、本気で怒られるから。
唇を離すと、物凄い顔で睨まれた。
だけどその奥が、快楽の色を覗かせてる。
頭を撫で、倒れる前に抱き締めた。
翔「……健人」
健「………」
翔「店のルールは、知ってるな?」
健「………」
翔「どうするかは、お前に任せる。…好きにしろ」
それだけ告げると、俺は智を連れて本事務所を出て。
そのまま、事務所でシゲに帰る事を伝えるとマンションへ向かった。
