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愛すると言う事…

第1章 episode 1


ただ、一つ分かったのは翔さんに抱き締められると少なからず俺の心臓は落ち着くって事。

だからって、苦しめてる張本人はあの人に変わりくて…
なのにあの人に抱き締められると落ち着くって…おかしな話だ。

あぁ!
もう!
訳分かんねぇ!

結局、俺の頭の中はそんな事の堂々巡り。
イライラするから、またただ喋り続ける二宮和也を放置して屋上を後にした。

やっぱり背中には『また明日♪』って声。

だけどそれは、何故か俺には嬉しそうに聞こえた。




マンションに戻って煙草に火を着けた。

こんな生活を、どのくらい過ごしただろう。
"あの日"から、翔さんとは会ってない。
会うどころか、連絡もしてない。

用事も無いから電話しないって、当然の事なんだけど。

それでも、一日のうちに最低一回は"あの日"を思い出して名刺を眺めてた。
店でもボーッとする事が増えた。
…らしい。
潤が『女でも出来た?』なんて茶化すから、『…興味ねぇ』って返したら、『何だ、恋患いかと思った』って笑われた。

その瞬間に浮かんだ翔さんの微笑。

いや、おかしい。
ここで何であの人が思い浮かぶ?
違うだろ。

潤「あぁこの前聞いた話なんだけど…達也さん。オーナーと出来てるらしい」

智「……は?」

潤「な?ビックリだろ?男だぜ?まぁでも…無くはないんだよなぁ」

智「………」

潤「だってさぁ、超イケメンで綺麗な男って居んじゃん?世の中、珍しくも何ともないし…」

マジか…

『でもオーナーは無いよなぁ』って、潤が笑う。
ホストクラブなんてやってるくせに、ここのオーナーは至って普通の、不細工でも無ければイケメンでもない。

どこにでも居そうな普通の男。

なのに、No.2を背負ってる達也さんと?
世の中分かんない。

『何か贔屓でもしてもらってんのかね?』なんて、邪な詮索を始めた潤の声は、最早どうでも良かった。


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