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愛すると言う事…

第1章 episode 1


1ヶ月経った頃。

店の帰りに煙草を買う為、コンビニに寄った。
駐車場に、見た事のある真っ白な高級車がポツリと一台停まってる。
こんな時間だからコンビニが混んでるはずはもちろんなく、凄く目立ってた。

『いらっしゃいませぇ♪』

時間帯からして不釣り合いな程に元気のいい店員の声が少し鬱陶しいけど、まぁいつもの事だと気にしなかった。

真っ直ぐにレジに向かい煙草の銘柄を告げて財布を取り出す。

翔「……帰りか?」

後ろから突然声を掛けられ振り向くと、やっぱり外にあったのはこの人か…と思う。

『1カートンでよろしいですかぁ?』

智「…はい」

店員の女がここでこんな時間に働くのは、俺たちみたいな連中がちょくちょく来店するから。
…だと、かなり前に潤が言ってた。

だから無駄にニコニコしてるのか…

翔「シカトか(笑)」

智「…は?」

翔「『帰りか?』って聞いただろ?」

智「…あ、あぁ…そう」

やっぱり俺の心臓は早くなる。

ああ言ってたけど、やっぱりこの人俺の事殺そうとしてるんじゃないか?

珍しく今日はスーツを着ていない。

智「…?…休み?」

翔「あぁ、今日は定休日だ」

会計を済ませて店の前。

そんな会話をしたけど、その後特に話す事もないから『…じゃあ』って踵を返した。

翔「まだ、うちに来る気無いのか?」

歩き出した俺の背中に声を掛けられ振り向いた。
車の側で凭れ掛かる様に立ってる翔さんが居る。

智「……分かんない」

翔「そうか。……今日、学校休みだろ?」

智「…あぁまぁ」

翔「うち、来ないか?」

智「………何で?」

翔「別にこれと言った意味はないけど…まぁ強いて言えば、腹減ったなぁと…」

智「………」

どう受け取ればいい?
"腹減った"と言われて、俺に飯を作れと?
まさかなぁ…

翔「お前、ちゃんと食ってるか?」

智「………」

翔「この間思ったけど、お前…細過ぎる」

あぁ、抱き締められたからか。

智「…まぁ……そこそこには?」

翔「そこそこねぇ…」

呆れた様にそう呟いた翔さんは、『とりあえず、乗れ』と助手席を指差した。

とりあえずの意味が分かんない。

動かない俺に、運転席のドアを開けた翔さんが困った様な顔をした。


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