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愛すると言う事…

第1章 episode 1


翔「…嫌か?」

智「……いや………良く分かんない…」

翔「何が?」

智「………全部。…何で俺を連れて行きたいのかも、何であんたと居ると心臓が苦しくなるのかも、学校行ってても店に出てても風呂でもトイレでも…何であんたの事が頭から離れないのか…俺にはサッパリ分かんない。分かんないからイライラしてムカつく」

翔「…なるほど」

ツカツカと近付いて来た翔さんは、俺の腕をそっと掴むとそのまま車の助手席に乗せた。

一気に喋り過ぎた所為で余計に苦しくなった。

そのまま車を走らせ、馬鹿デカいマンションに連れて行かれた俺は、今のこの得体の知れない感情を何とかしてくれるかもしれないと少しの期待を胸に翔さんの後を着いていった。


無駄に広いリビング。

一人で暮らすには大き過ぎるソファやテーブル。

"あの日"と同じだった。
ただこの日違ったのは、散らかってるって事。

新聞や雑誌がそこかしこに置き去りで、テーブルにはコーヒーカップ。
しかも飲み掛けの…
奥のキッチンも、何をしたらそうなるのか食器やら鍋がそのまま放置されたまま。

智「……汚ねぇ…」

翔「………片付ける暇が無くて」

物凄い小さな声で言い訳をした。

視線を翔さんに向けたら、叱られた子供の様な表情で後頭部を掻いてる。

智「…片付け、出来ないの?」

翔「出来る。…ただ、得意ではない。やれば出来るけど、やるまでに気合いと時間が必要だ」

智「……何を偉そうに」

翔「……悪い」

智「…スウェット、ある?」

翔「…?…あぁ」

智「…貸して」

着ていたスーツのジャケットを脱いだ。

シャツのボタンを外しズボンも脱ぐと、渡されたスウェットの下を履いた。

借りたTシャツとスウェットに着替えたら、大きくてダルダルだった。


片っ端から散らかってる床やらラグの上の物をテーブルに上げる。
飲み掛けのコーヒーカップを翔さんに手渡しキッチンへ持って行かせて、掃除機を借りた。

テーブルの上。
新聞と雑誌に別けて読む読まないを確認したら、読まない方をゴミ箱に捨てた。
残ったのは一冊の雑誌と数誌の新聞紙。

これだけならテーブルに置いてあっても気にならない。

リビングが片付きキッチンに入ると、鍋の蓋を開けた瞬間、得体の知れない物にゾッとした。

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