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愛すると言う事…

第1章 episode 1


あり得ない…
これじゃあ身体に悪いだろ。

カップや皿なんかを全部洗って。
鍋は気持ち悪いからそのまま捨てた。
これだけのマンションに暮らしてるくらいだ。
鍋の一つや二つ、いつでも買えるはず。

シンクの中は綺麗に片付き、後ろの翔さんに皿を拭くよう指示を出す。
コンロをサッと拭いて磨いたら、すぐにピカピカになった。
そこら辺にあった食べ掛けの食パンや、ゴミだと俺が判断した物は全て破棄。

サッとキッチンを見渡したら、何にも無くなった。

智「…ふぅ…」

翔「…………凄ぇ…」

呆然としてる男、櫻井翔。

智「…いくら一人暮らしだからって、あんな状態で良く生活出来たな。俺にどうこう言う前にちゃんと片付けしろよ。大体、夜の仕事してたって部屋は綺麗に保てるはずだ。やる気の問題だぞ」

翔「………は、はい」

一気に喋ったら、疲れがドッと押し寄せた。

リビングのソファにドサリと腰を下ろしたら、翔さんがコーヒーを差し出す。

翔「お前、潔癖症か?」

智「…ハァ~……違う。あれだけ散らかってりゃ、誰だってうんざりする。『片付けの出来ない奴はろくな奴じゃない』って…ばあちゃんが言ってた」

翔「………」

二の句が継げない翔さん。

俺は普段あんまり喋らないけど、今日はあまりに喋り過ぎた。

疲れと眠気が一気に襲い掛かってくる。

翔「横になるなら、ベッド行け」

智「………」

翔「おい。智…」

翔さんの声は聞こえてる。

だけど、指一本動かせない程の睡魔と疲労感。

あぁ…
駄目だ。
瞼が重い…

フワリ…
身体が浮いた。

ビックリしたけど、目を開ける気力もなくて。
ふわふわ心地いい揺れと、翔さんの香りに意識は遠退く一方。

多分、ベッドに寝かされた。

俺の記憶はそこで途絶えた。


目が覚めたら、ベッドの中だった。

一瞬で思い出す。
翔さんに担がれベッドに入った事。

リビングに戻ったら翔さんがパソコンを眺めながらコーヒーを飲んでる。

翔「おはよう」

智「……はよ」

ソファに座ったら翔さんがコーヒーを淹れてくれた。

翔「何か食うか?」

智「…あー、いやいい」

翔「食わないのか?」

智「…ん」

翔「だからそんなに細いんだろ?」

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