
愛すると言う事…
第1章 episode 1
元々、食は細い方だって自覚はある。
潤にも良く言われるし…
でもそこまで食う事に執着心が無いから、気にもしてないんだけど。
人から見たら細過ぎるんだろうか。
智「…あんま気にした事ない」
翔「何か食おう。…俺が腹減った」
時計は昼を回ってる。
翔さんが立ち上がったのを見て、今朝方のキッチンが一気に甦った。
智「…ねぇ。…まさか、翔さんが作んの?」
翔「あ?…何で?」
智「…さっきの状態考えたら、ちゃんとしたもん食えんのかな?って…」
翔「………」
智「…もう俺、片付けんの嫌だよ」
翔「………」
智「………俺が作る。…座ってろ」
翔「偉そうだな」
智「…少なくとも、翔さんよりはまともなもん作れる」
ちょっとだけムッとした顔してる。
だけど明らかに今朝見たキッチンの状態考えたら、俺の方が食えるもんを作る自信がある。
それに、あれほどキッチンを散らかす事もないはずだ。
まぁ、それもこれもばあちゃんのお陰だけど。
キッチンに入って、冷蔵庫を開けたら。
大半がビールで占められてて、食材は卵とベーコン。
奥に何だかまた得体の知れない物を発見してしまった。
…破棄。
米を炊いてる間に、見つけた少しの野菜とベーコンで野菜炒めを作る事にした。
本当なら豚肉がベストだけど…
棚を漁ってたら味噌を発見したから、残った野菜で味噌汁を作った。
リビングに出来たご飯を並べたら、翔さんは『美味そう』って呟いた。
翔「いただきます」
智「……どうぞ」
味噌汁を啜った翔さんが『あぁ、美味ぇ…』と声を洩らす。
智「…片付け、やってよ?」
翔「もちろんだ。…っつうか、うちに住まないか?」
智「……は?」
翔「こんな美味い味噌汁、俺じゃ出来ねぇから」
智「………嫌だよ、家政婦じゃあるまいし」
人の話もろくに聞かず、ひたすらに黙々と飯を食う目の前の男は、本当に代表取締役なんだろうか。
どこにでも居る普通の男にしか見えなくなってきた。
綺麗に食い終えた翔さんは『なぁ、マジで考えてくれないか?』と真剣に言う。
翔「うちの店に来るなら、ここから近いし…家賃も水道光熱費も、食費もいらない」
智「………」
真剣な上に、必死な様子だった。
