
愛すると言う事…
第2章 episode 2
『心配すんな。チクった訳じゃない。…達也が鋭いだけだ』
そう言われて、ホッとした。
『…で?』
智「…実は、櫻井さんから誘われてます。【Club Night's】の」
『…なるほどな。……行くのか?』
智「……出来れば」
『そうか。まぁ。…本当は智を失うのはキツい。でもなぁ…お前が行きたいなら仕方ねぇし…』
智「………」
『達也と昌宏いるしなぁ。向こうでトップになるのは簡単じゃねぇぞ?』
一応『…はい』とは答えたけど、俺がトップ目指してる様に見えるんだろうか。
営業も何もしてないのに…
『まぁ、頑張ってみろ。……いつから行くんだ?』
智「…まだ決まってないです。けど、店はもう…」
『今日、出ないのか?客に告げずに?』
智「…はい。今の客を引っ張るつもりないので。…だから俺の客には次の店とかは一切言わないで下さい」
『お前っ……いいのか?櫻井さんとこで新規付けるのは簡単じゃねぇぞ?』
そう言われて『…はい』とだけ告げる。
俺の勝手で、店を辞めるんだ。
今付いてる客まで引っ張ったんじゃ、散々世話になったオーナーやスタッフたちに申し訳ないから。
翔さんは"詫び入れる"って言ってたけど、それをするのは俺の方だ。
頭を下げた俺に、オーナーは少しだけ涙ぐんでて。
『頑張れ』と、一言くれた。
オーナーと別れ、マンションに帰るとすぐに潤に電話した。
潤『大丈夫か?お前』
一通り説明した俺に、心底心配そうな声で言われた。
分かってたけど、やっぱチクった訳じゃなかった。
智「…何とかなんだろ」
潤『簡単に言うよなぁ…』
智「…潤も…って思ったけど、オーナーの顔見たら誘えねぇわ」
潤『俺はいいよ(笑)別に不満もねぇし♪』
智「……いつか、マジで来たくなったら連絡くれ」
潤『分かった♪番号変えるんだろ?後で教えろよ?…まぁ、また遊びに行くわ』
智「…ん。……あ、翔さんの部屋だけどな」
潤は『そうだった(笑)!』って笑う。
『またな』と電話を切って、俺は思う。
案外、周りの人間に恵まれてたのかもしれないと。
人と関わって来なかった所為で、今更気付いた。
もっと早く気付いてたら…
少しは、何か違ってたんだろうか…
