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愛すると言う事…

第2章 episode 2


煙草を咥えて、ハッと気付く。

翔さんに、電話…

時計を見たらもう18時をとっくに過ぎてて、19時になろうとしてる。

翔『……何か手間取ったのか?』

開口一番、そんな心配そうな声。
ちょっと申し訳なくなった。

智「……ごめん片付いた。………電話、忘れてた」

翔『お前は……まぁ、良い。問題なく辞められたんだな?』

智「…ん」

翔『後で向こうに連絡入れるか…』

智「…客。……全部置いて来たから」

翔『…そうか。……部屋は?どうする?』

智「…こっから遠いんだろ?」

翔『あぁ、徒歩出勤ならキツいだろうな』

智「………なら、そっち行く」

翔『何でタクシー使わないんだ?』

智「………」

黙り込んだ俺に、翔さんはそれ以上聞いては来なかった。

タクシーは、嫌いだ。

そんな事を話して、この人は嗤わないだろうか。
俺にとっては、かなりのトラウマなんだ。
それを今まで人に話した事はない。
話したいと思える人間も居なかったんだけど。
潤には、話してもいいか…と思った事はあったけど、突然そんな話されても困るだろうし。

翔さんは明日この部屋に来ると告げ、電話を切った。


引っ越しかぁ…
面倒臭ぇなぁ…

まぁ、纏める荷物なんて知れてるから、すぐに終わるだろう。


冷蔵庫から缶ビールを取り出し、煙草を咥えてベランダに出た。
春先とは言え、まだまだ夜の風は冷たい。

辺りを見下ろせば、煌々と煌めくネオンが広がり。

その上には、そこを見下ろすかの様に丸い月が遠慮がちに照らしてた。




久し振りに、ゆっくり眠れた気がする。

夢はもちろん見たけど、早い時間にベッドに入ったお陰で魘されて起きたのが朝方だったから、睡眠時間自体は十分だ。

寧ろ、寝過ぎた様な気もする。

シャワーを浴びてソファでゆっくりコーヒーを飲む。
煙草の煙を吐き出しながら時計を確認したら、7時前。

あ…
翔さん、何時に来んだ?
何か、特に身の上とか細かく話した覚えないのに、部屋の場所まで知ってるっぽい。

怖ぇなぁ…



学校には行ったけど、教室にちょっとだけ顔を出した後すぐ屋上に向かった。
やっぱり二宮和也生徒副会長が顔を見せる。

俺が帰るまで延々と一人で話して、必ず帰る間際に『また明日♪』と笑う。

本当に不思議な奴だ。


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