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愛すると言う事…

第2章 episode 2


マンションに帰ると、見計らった様に携帯が鳴った。

翔『帰って来たか?』

智「………」

翔『おい、智?』

智「………ストーカー?」

翔『は?』

智「…どっかで見てた?」

翔『見てねぇよ。高校生の帰宅時間くらい大体予想付くだろ』

智「……へぇ」

翔『………今、行く』

呆れた様な大きな溜め息が聞こえて、プツリと通話が途絶えた。
また少しキュッと胸が締め付けられる。
出会った頃程じゃないにしても、やっぱりこんな感覚は慣れるもんじゃなくて。
誤魔化す様に煙草を咥えて火を着けた。


一時間もせず翔さんが来た。

部屋の中を一通り見渡し。

翔「……何もねぇな…」

潤みたいな事を呟いた。

とりあえずソファに一旦座り、俺はコーヒーでもと立ち上がった。
…けど。

智「……あ」

翔「あ?」

智「……カップ、ねぇわ」

余分なものは何一つないこの部屋に、俺以外が使うカップどころかコップも皿も何もない。

全てにおいて一人分しか揃ってない。

仕方ないとソファに戻った俺に、翔さんは心底呆れた溜め息の後、小さく笑った。

…久し振りに苦しいかも。
笑わないでほしいものだ。
あんたが笑うと俺が苦しみに耐えなきゃなんない。

ソファだって、部屋のサイズと全く釣り合わない二人掛けだから、左隣に居る翔さんから直で温もりが伝わってくる。

翔「さて。…契約、どうする?」

智「…ん?」

そんな事を考えてた所為で、言われた事をすぐに理解出来ず聞き返したら、小さく睨まれた。

翔「賃貸だろ?解約はいつする?」

智「…あー……いつでも」

翔「店の方はマネージャーに言ってあるから、いつでも構わない。…希望は?」

智「……卒業式、終わってから?」

翔「いつ?」

智「…ちょうど一週間後」

翔さんは煙草を咥え少しの間考え込んでた。

天井を見上げてた視線が、俺に戻るとふわりと微笑みを浮かべる。

翔「だったら、もう今日でもいいな。…荷物なんて殆んどないんだろ?」

智「…まぁ…そうだけど」

翔「決まりだ。段ボール調達して来るから、荷物纏めておけ」

そう言うや否や、あっと言う間に部屋を出て行ってしまった。

今日、かよ…
明日でもよくないか?

そう思いながらも、段ボールを探しに行ってしまっては動くしかない。
仕方なく寝室のクローゼットにあるスーツを取り出した。

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