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愛すると言う事…

第1章 episode 1


今年でやっとこの面倒臭い高校生活も終わる。

毎日毎日重い足を引き摺りながらも通い続けたのは、俺を高校に入学させてくれたばあちゃんの為。

無い金を必死で工面して高校へ入れてくれた。

『智。高校だけは行かなきゃ駄目だよ。このご時世だ。中学卒業の学歴じゃ、生きてなんか行けない』

ばあちゃんはそう言って聞かなかったから、俺も必死で勉強した。

まぁ。
もう死んじまったけど。

1年の時既に面倒臭ぇって思ってた。
それでも通い続けたのは、やっぱどっかで見てんじゃねぇかって思うから。


ガヤガヤと騒々しい教室。

誰も俺に目を向ける奴なんかいない。

一番後ろの窓際にドサリと腰を下ろした。
机に頬杖付いて窓の外を眺めたら、どっかの部活が朝練をしてたらしく後片付けに駆け回る数人の生徒が居た。

何が楽しいのか…
どいつもこいつも笑顔で溢れ返ってた。

あぁ、俺って最後に腹の底から笑ったの何時だっけ?

『大野くん…あ、あのね?今日、と、当番…なんだけど…これ…に、日誌…』

智「………」

『あ、ごめんね?えっと…あたし、や、やっておくね?』

気付いたら目の前に女が立ってた。

しどろもどろなその女が、言うだけ言ってさっさと居なくなって。

何だ、あれ…

『おい大野!お前、今日当番だろ!皆ちゃんと順番にやってんだからお前もちゃんとやれよ!』

智「………」

『な、何だよ!文句なら担任に言えや!』

智「……別に。……何も言ってねぇよ」

『…え?』

智「…勝手にさっきの女が日誌持って居なくなったんだろ?」

『…は?』

智「…断ったつもり、ないけど」

『な、何だよ!そうならそうって言えよ♪』

智「……まぁ、暇じゃないからやんないけど」

のそりと立ち上がった俺に、目の前の男が身構えた。

面倒臭ぇ事ばっか持って来やがって。

そのままダラダラと歩き教室を出る。
背中に、さっきの男がギャーギャー騒いで文句言ってたけど、いちいち聞いてなんかいられるか。


チャイムを聞きながら屋上に向かった。


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