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愛すると言う事…

第2章 episode 2


翌日からフロアに出た俺。

ヘルプから始まった俺の仕事は、殆んど経験がない事ばかりで少し新鮮だった。

控え室で待機してれば他の連中は楽しそうに女の話やら流行りの店の話で盛り上がり。
俺は一人、煙草を咥えてただ眺めてた。

涼「楽しい?」

客を見送ってきたらしい涼介さん。
年は下だけど先輩には変わりない。

智「…えぇ、まぁ」

涼「楽しそうに見えないけどね(笑)」

智「………」

涼「何か凄いよ?俺の客がさぁ、みんな『あの子誰?』って…『新人の智だよ』って教えたらヘルプに付けてって言うんだ」

この人…
何が言いたいんだ?
俺にどんな返事を求めてんだろう。

特に返事をしない俺に、変わらず穏やかに微笑む涼介さんがほんの一瞬だけ、瞳の奥にキラリと光る何かを宿した気がした。

別に取ったりしねぇよ。
人の客に興味なんかねぇし…
っつうか、そもそも俺に客が付こうとずっとヘルプのままだろうと、どっちでも良かった。
給料さえ貰えればそれで。

光「涼介、どうした?」

涼「何でもないですよ?…ヘルプの"智くん"が人気だよって教えてあげたんです」

光一さんが、その言葉に少しだけ困った顔をした。
マネージャーが昨日ポロッと溢した言葉を思い出す。

『あいつ、ちょっとだけ厄介なんだよねぇ』

それに対して返事はしなかったけど、分かった気がする。
この店の方針に、あんまりそぐわないんだろう。

そりゃホストなんだから自分の客を取られたりすんのは気分のいいもんじゃない。
ムカつきもするだろう。
だけどこの店はそうならない様に、ホストたちへの気配りもされてるから、他の店とは違う。

涼介さんは少し前に入って来たらしい先輩で、本人の口から直接聞いてないけど前の店で客を取った取られたで揉めたって聞いた。


その後閉店まで、俺はずっと光一さんのヘルプに付いた。

マネージャーが気を遣ったんだろう。
光一さんも、同じヘルプに付いた侑李くんも、帰り際に『気にすんな』って笑った。


『…お先に失礼します』と、残ってるマネージャーに声を掛けて店を出た。

のんびりと、身体に残ってる酒を抜く様に歩いてたら。

涼「あれ?智くんじゃん」

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