
愛すると言う事…
第1章 episode 1
一日中、屋上で過ごすのは全く珍しい事じゃない。
高校生活の大半をここで過ごしてた気がする。
ばあちゃん、怒ってんだろうなぁ。
今日最後のチャイムを耳にして、怠い身体を起こしたら。
「あ、起きた」
傍に見知らぬ男が居た。
見た感じ下級生だろう。
ネクタイの色が違うから。
男はそれ以降何かを言う事もなかったから、俺はそのまま屋上を後にした。
教室に戻った所で、鞄がある訳でもないからそのまま学校を出る。
また、ガヤガヤと騒々しい校門前を抜けて家路に着いた。
世間一般では、"高級"と言われるであろうマンション。
高校生の分際でこんなとこに一人で住んでるってのも笑える。
朝と全く変わってない生活感のない部屋の中。
着ていた堅苦しい制服を脱ぎ捨てソファに身体を預け。
煙草を咥えて火を着けたら、ユラユラとまた紫煙が立ち上がった。
夕方、着ていたスウェットをスーツに着替える。
濃紺色のシャツに袖を通し、真っ黒なスーツに身を包むと高価な腕時計と太めの指輪を嵌めて、首には小さいけど重量感のあるクロスのネックレスを下げた。
スーツを纏った瞬間から、俺は俺じゃなくなる。
財布と携帯、煙草をポケットに突っ込んでマンションを出た。
陽の沈み掛けた、夕方から夜の狭間。
気怠いながらも店までの道を歩いた。
潤「おはよう、智」
智「…おはよ」
店の従業員控え室に着くと、既に潤が居た。
殆んど人と関わりを持たない俺の中では、比較的仲のいい方だ。
…と、思う。
潤「相変わらず怠そうだな(笑)」
やる気のなさはこの店一番だと、いつもコイツは笑う。
それでも文句を言われないのは俺が今の所、この店のNo.1だから。
売り上げも、指名率も、群を抜いてるらしい。
だけど俺には一切の興味がない。
給料貰って生活さえ出来りゃ何の問題もないから、俺は客を引き止めもしないし必死で営業する事もしない。
面倒臭いから。
開店30分前。
オーナーが今日の挨拶をして、売り上げの低い奴らを叱責した。
悔しそうに顔を歪めた後、必ず俺に向けられる醜い嫉妬心。
必死で営業してんのに、ちょっと前に入った若造にNo.1を持ってかれたんじゃ、そりゃ恨みたくもなるだろう。
