
愛すると言う事…
第3章 episode 3
1年間記憶が無いと言った…
その間に、何かあったんじゃないかと思った。
俺が救ってやるよ。
翔「智」
智「………」
俺を見ようとしない智の視線を、言葉で向かせる為に呼び続けた。
翔「…智」
智「………」
翔「俺は、お前が好きだ。お前を守りたいし、救いたい。傍に居て抱き締めてキスして、愛してるって伝え続ける」
智「………」
翔「今は話してくれただけで十分だ。でも、お前が背負い込んでる物は刷り変えられた記憶に過ぎない。これから、ゆっくりでいい。お前はおばあさんにもご両親にも愛されて来たんだって事、思い出してほしい」
智「……ばあちゃんは、俺が居なかったらって…」
翔「言ってたか?本当にそんな事…聞いたのか?」
俺の声に、初めて顔を歪めた。
そっと、静かに智を抱き締めて『もう、いい。ゆっくりでいいから』と、背中を撫でた。
顔を覗き込んだら、濡れた頬を拭う。
俯き気味の顔を上げてやると、小さくそっぽを向いた。
そのまま頬に唇を寄せキスをする。
ピクリ…小さく揺れる肩に気付きながら、智の唇に俺のそれを重ねた。
重ねた瞬間に、俺が止まらなくなりそうだったから離れようとしたのに…
無意識なのか、智の手が俺の背中に回り小さく服を掴んだ。
不謹慎ながら、可愛いと思ってしまう。
必死で理性を保ちつつ、智の唇を小さく吸い上げて離す。
赤くなった智の頬を撫でながら『俺はずっと傍に居る』と告げた。
また潤み始める瞳を指で撫で抱き締め直した。
昼過ぎ。
ベッドで眠る智が、やっぱり魘されてた。
汗ばんだ額を拭いて頭を撫で、『大丈夫だ』と囁き続ける。
俺はまるで洗脳するかの様に『お前は殺してない』と耳元で伝え続けた。
ここまで思い込むって事は余程誰かに言われ続けたんだろう。
それがおばあさんだとは到底思えない。
智は出会った当初からおばあさんの事を良く口にしていた。
聞いたところ、躾にはそこそこ煩かった様だけど叱られた事は無いと。
高校へ行かないって言った時だけだと言ってたくらいだ。
おばあさんの智への愛情は十分に分かる。
