テキストサイズ

愛すると言う事…

第3章 episode 3


なら、誰が?
親戚の連中か…
"人殺しなんて世話出来ない"と言われたのは親戚の連中で、おばあさんは"孫には変わりない"と言ってた。
この時点でもう智は思い込み始めてたんだろう。

自分が両親を死なせてしまったと…

幼い子供なら、その思いはかなり強いはずだ。
長い間、魘され続けてきた智。
ゆっくりと穏やかに眠れる様に、傍に居て願うしか俺には出来ないのか…




マナーモードにしていた俺の携帯が、夕方近くなるに連れひっきり無しに震え始める。

ここ最近、客の奴らに『もう近々店に出なくなる』って宣言してから尚の事。

智の為にも、早くそうしたかった。

店の管理の大半をシゲに任せてる現状、問題もないからすぐにでも引っ込めるんだけど。
どうも俺の客の奴らはしつこくて…

智「…………はよ」

翔「おはよう、眠れたか?」

智「………かなり」

翔「そうか、なら良かった」

寝起きの智は、元々ののんびりした雰囲気が倍になる。
それはそれで可愛いから、堪らない。

少し眉間に皺を寄せた智が、Tシャツに手を突っ込んで腹を掻きながらソファに座った。

翔「どした?」

智「…………頭、痛ぇ」

この時間まで寝てる事自体がちょっと珍しい。
寝過ぎたんだろう。

薬と水を渡すと、小さく息を吐き出してそれを飲んだ。

最近気付いた。

多分、智は薬が苦手だ。

その証拠に、少々の頭痛くらいなら薬を拒否する。
言えばまた機嫌を損ねるから、絶対口には出さないけど。


俺の傍にあった携帯がしきりに震えてるのに気付いた智は、一瞬だけ顔を曇らせた。
すぐに立ち上がり『………シャワー』と呟き出て行く。

もう今日で最後にするか…

山ほど来ていたメールに、それを伝えて電源を落とした。



一緒に暮らし始めても智は絶対に俺と一緒に出勤する事はしなかった。

『……歩いて行く』と言って聞かない。

智「………先、出るから」

翔「なぁ、何で一緒に行かないんだ?」

智「………翔さんは、オーナーだろ?俺は従業員だから」

翔「…?…」

何が駄目なんだ?

オーナーと従業員が一緒に出勤出来ないって理由は、何なんだ?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ