テキストサイズ

愛すると言う事…

第3章 episode 3


智はそれ以上説明する気が無かったのか、面倒だったのか…
そのまま出て行ってしまった。


開店前、店に"翔"として出るのは今日で最後だと全員に告げた。
まぁ一応、斗真には先に連絡はしておいたけど。

驚く奴や惜しんでくれる奴と、反応は様々だったけど…有り難い事に『お疲れ様でした』と声を掛けてもらった。



最後のホスト"翔"を勤めるこの日。
今まで通い続けてくれた客以外の連中も花束をくれたりプレゼントを渡して来たりと、一際パーティー感が強かった。

最後の客は、傍にヘルプとして光一、涼介、智が付いた。

光一が気を遣ったんだろう。
俺の客の中で一番の客だ。

『お疲れ様、翔』

翔「ありがとうございます」

渡されたプレゼント。
『開けてみて』と言われて、包みを開けると。
やっぱり、と思った。

超高級腕時計。

数百円はするだろうそれを、『いいんですか?』と嬉しそうな顔を貼り付けた。
『もちろんよ♪』と、彼女もまた嬉しそうな表情を見せる。
光一や涼介が羨ましいと声を上げる中、智だけは淡々と酒を作ってた。

『……貴方、智…くん、だったかしら?』

智「………はい」

チラッと彼女を見ただけで、また作りかけの酒のグラスに視線を戻した智。

涼介が失礼だと言わんばかりに肘を突く。

『気にしないで?まだ慣れてないんでしょ?』

その言葉に、俺が答えた。

翔「いえ。もう智は3年近くなりますよ?うちの店はまだ来たばかりですけど」

『…そうなの?』

智「えぇ。…こう言う男なんです。可愛がってやって下さいね」

『そうね。でもホスト遊びするなら、私は光一や涼介の方が楽しめるかも』

……分かってねぇな。
まぁ、智に薦めるにはちょっとクドい客だ。

良かったっちゃあ、良かった…かな。



閉店後。

見送りから店内に戻った俺に、一斉にクラッカーが鳴らされた。

「「「お疲れ様でしたぁ!」 」」

光一の声を筆頭に、次々と労いの言葉を浴びせられる。

翔「ありがとう」

グラスを渡され涼介の声で乾杯をしてくれた。

有り難い。

明日…もう今日か。
定休日とあって、全員が飲んで食って楽しんでくれてた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ