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愛すると言う事…

第3章 episode 3


雅「…すいません!まだ準備中………なんだ、翔ちゃんかぁ♪」

暖簾の出てないドアを開けると雅紀の声がして。
【準備中】の札を無視して店に入った俺たち。
顔を出した雅紀は智を見て、嬉しそうに笑った。

"翔ちゃんかぁ♪"って言いながら視線は智だったのも、若干気に入らないけど。

翔「何か食わして」

雅「もぉ!いっつも営業時間無視して来るんだから!」

智「………腹、減った」

雅「待ってて♪何でもいい?」

智「…ん」

翔「おい。俺には文句言うくせに智には優しいってどう言う事だ」

カウンターの奥から、雅紀のデカい笑い声がして。
隣の智が、ふっと小さな小さな笑みを溢した。


極僅かな、本当に小さな笑み。

ずっと願い続けた智の笑顔。
"笑顔"とまでは言えないけど、たったそれだけで俺にはこの上ない喜びだ。


出会った頃は"食欲"なんて全く無かった智が、ここ最近は俺に飯を作ってくれてるお陰かちゃんと食うようになった。

それでも人よりかなり少食なのには変わり無いけど、食わないよりは遥かにいい。

だからこうして『…腹減った』って言葉も時々口にする。

雅「お待たせぇ♪…雅紀特製!あんかけ炒飯!」

翔「お?新作?」

雅「そう♪まだ誰も食べた事無いんだよ♪」

智「………毒味?」

雅「違うよ!……味見?」

翔「変わんねぇだろ」

スプーンを持った智は、また『ふっ…』と笑う。

雅紀も気付いたらしく、智の頭を撫でてた。

驚いて顔を上げた智に雅紀は満面の笑みを向ける。

雅「智くん、可愛いねぇ♪」

智「……///」

翔「和に怒られるぞ?」

雅「大丈夫♪和は俺の事信じてくれてるから♪」

和「………誰が?…誰を?」

奥から聞こえてきた声。

雅紀の彼氏、和が顔を出した。
その顔は、不機嫌そのもの。

和「…ちわ。翔ちゃん」

翔「おう。居たのか」

和「今来たの。…まーくんすぐ浮気するから………って、大野智!」

和が俺の隣で"新作炒飯"を黙々と食ってる智を見て、嬉々とした表情を浮かべ叫んだ。

しかもフルネームで。

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