
愛すると言う事…
第3章 episode 3
智も恐らく同じ事思ったんだろう。
不機嫌そうな顔で、眉間の皺は深くなる一方だ。
『ねぇねぇ♪名前は?』
智「……………臭ぇ」
『え?何?』
智「………香水臭ぇよ、お前。…近付くな」
『…は?』
翔「あははは(笑)!」
思わず爆笑した俺に、女がキャンキャンと喚き始める。
恥ずかしい事この上ないから、『じゃあな』ってあっさりその場を去った。
レジで並んでたら『……良くあんなのと付き合ってたな?』って、冷たい視線を向けられて苦笑いするしか無かった俺。
買い物袋三つ分。
しっかりと重い袋を二つ、目を合わせる事なく俺に持たせる智は軽い方を無言で手に取ると店を出て行く。
嫌がらせだ。
さっきの女の件で、智は俺への嫉妬を言葉ではなく嫌がらせとして表現してる。
可愛い。
…けど、これはさすがにキツい。
一つの袋は食材が入ってるだけだけど、もう一つはかなりの量のビールやら酒が入ってるから、重量が半端ない。
翔「……なぁ…手、千切れそうなんだけど…」
智「………」
平然と歩く智は振り向きもしない。
何度も智を呼んでみるけど、反応は無く。
翔「……マジで、可愛いな?お前」
智「…煩ぇ///」
耳を赤くして振り向いた。
持ってた袋を俺に乱暴に差し出しながら、酒の入った袋を引ったくる。
小さな声で『…うぉ』って溢して俺を見たけど、そのまままた歩き出した。
マンションに帰ってすぐ、智は買い物した物を冷蔵庫に片付け始めて。
手伝おうと思ったけど、また睨まれるからやめた。
智には拘りがあるのか、食材を入れる位置が決まってる様で俺が適当に詰め込むと後で手直しされる。
何度か手伝って適当に詰め込んだら結構な勢いで睨まれた事があって。
『…どうせ飯作るの俺なんだから。何処に何があるか分かんなくなるから触んな』
そう言って怒られた。
だから、俺が冷蔵庫の中で触っていいのは、酒だけ。
それ以外を移動なんかさせたもんなら、もう大変だ。
呑気に煙草を吸ってコーヒー飲んでたら、いつの間にか智が出勤の支度を済ませてた。
