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愛すると言う事…

第1章 episode 1


聞いてから気付いた。

引き抜く理由なんて、一つしかない。
売り上げが伸びる、客が増える。
要は店の為。

答えを聞く前に、乾いた笑いを溢した俺に男は予想外の答えを告げた。

翔『生きてる様に見えないから』

智「………は?」

翔『智の目が、死んでる様にしか見えない。お前には、生きていく理由があるか?もし、今…"明日死ぬ"って言われても、何の抵抗もしないんじゃないか?』

智「………」

『だから、生きていく為の理由を見つけてやりたい』と、男は告げた。

意味が、分かんない。

生きていく為の理由って何だよ…

答える事の出来ない俺に、男は『一度会って話さないか?』と言う。
それでも返事どころか声も出さない俺に、男は更に話を進め…

翔『…明日。店の定休日だろ?夜7時に、【starlight】の近くにあるコンビニで待ってる』

智「………」

翔『智?』

智「………」

翔『俺はお前に、"生きて"ほしい』

最後にそう言って電話を切った。

"生きる"って、何だ…?
俺は今、死んでんのか?

いや、ちゃんと呼吸もしてるし心臓だってトクトク言ってる。
俺、そこまで頭悪くないはずだ。

意味がまったく分かんない上に、あいつが何を言いたいのかもサッパリだ。

訳が分かんないままイライラしてて、気付いたらソファで眠ってた。



目が覚めたらソファの上で。

スーツを着たままだったせいで、身体が重くて仕方ない。

時計は7時半を過ぎたばかり。
俺は慌てる事もなくシャワーを浴びた。
サボってしまおうか…と一瞬悩んだけど、やっぱりばあちゃんの怒った顔が浮かんで仕方なく学校へ向かった。

もちろん、遅刻だ。

それでもHRには何とか間に合ったから、ばあちゃんに顔向け出来る。


1時限目から屋上で過ごす俺。

快晴の屋上は本当に温かくて気持ちが良かった。
ゴロンと寝そべって空を眺めてると勝手に瞼は落ちていく。

和「…あ。また居る」

眠りに落ちる間際でそんな声がして。
視線を向けると、この間居た見た事もない下級生が立ってた。

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