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愛すると言う事…

第5章 episode 5


漸く到着した救急車。

救急隊員が俺と交代すると、ストレッチャーで運び蘇生を続けながら俺から聞いた名前を呼び続けていた。

翔「頼む、智っ!……頼むからっ!」

救急車の中でずっと手を握りながら名前を呼び続けた。


田舎町の所為で、病院までかなり時間が掛かった。

それでも、すぐに手術室に運ばれた智。

廊下に一人取り残された俺。


ただただ…

祈るしかなかった。






医者が出て来た時にはもう空が白み始めてて。


『……何とか、一命は取り留めました。…ただ、油断は出来ませんのでまだICU(集中治療室)からは出られませんが…少しだけならお顔を見る事は可能です。どうされますか?』

翔「…お願いします」

『では、どうぞ』

中に通された俺は、あらゆる機械に繋がれた智を目の当たりにした。

人工呼吸機。
心電図モニター。
点滴チューブ。

他にも、胸からは肺に入った水を抜く為に入れられたチューブに、人工排泄用カテーテル。


ただ…

心電図モニターから聞こえてくる規則的な音が、智が生きてるんだと知らせてくれていて。

力の入らない智の手を、そっと握ると。

さっきとは比べ物にならないくらい、温かかった。

翔「……馬鹿な事…しやがって…」

答えてはくれないけど、『うるせぇ』って言ってる気がした。

翔「…早く…目、開けろよ?もう逃がさねぇからな?」

意識の無い智の耳元で、医者の聞こえない様に囁いた。


数分でICUから出され、智はそれから間もなく面会謝絶になった。

シゲ、斗真、光一…涼介までが駆け付けてくれて。

斗真は『良かった…』とその場で泣き崩れ、光一が背中を擦っていた。
涼介も必死で涙を堪えてる様で、唇を噛み締めてる。

翔「……悪かったな?」

光「それはいいです。…けど、智にいったい何があったんです?」

斗「そうですよ!どうしてこんな事…」

こうなってしまった以上、話さない訳にはいかない。

ここまで心配してくれてるんだ。

斗真に至っては涙まで流してくれてる。

俺は、智に申し訳ないと思いながらも、ここに駆け付けてくれたこいつらに、智から聞いた全てを話す事にした。


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