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愛すると言う事…

第5章 episode 5


シ「意味分かんねぇ…」

光「何だよ!そいつら!」

斗「……ぶっ殺す…」

全部を話し終わると、シゲも、光一も…斗真も怒りで手を震わせて。

涼介がただ一人、無言で俯き拳を握り締めてた。

翔「…智はずっと……自分を"人殺し"だと思い込んでた。餓鬼の頃からそう言われ続けてたんだろう。……だから、これ以上迷惑掛けられないと思ったんだと思う」

シ「だからって!」

翔「馬鹿だよな?…俺もそう思うよ。けど…あいつにはそうするしかなかったんだろ?今まで、人に頼った事の無い人間は、極限状態に陥った時、方法なんて見つけられるはずなんか無いんだ」

斗「…智くん」

翔「人を、初めて好きになって……でも、こんな迷惑な奴…って、あいつは思ったんだと、思う」

ガラス越しじゃ、智の顔はよく見えない。

だけど…

傍にあるモニターが、ガラスの向こうで生きてる事を知らせてくれてるから。

…生きてる。

今の俺には、それだけで十分だった。


暫くの間、ガラス越しの智を無言で見つめてた。

翔「…店もあるから。……今日はもう帰れ」

駆け付けてくれた4人にそう言うと、斗真はなかなか動こうとしなかった。

光一が『行こう…』と、4人を連れて廊下を歩き出し、『何かあったら、連絡下さい』と帰って行った。
シゲも『店は大丈夫ですから』って、笑って。

翔「…すまない。……頼むな?」

俺の言葉に、4人が頭を下げた。




俺は、ずっと病院に居る訳にもいかず。
近くのホテルに部屋を借り、病院へ通った。

1ヶ月程でICUは出られたけど、移った部屋は個室で。
予断を許さない状況は変わらない。

病室に入れる時間も、たったの二時間程度。

それ以外は処置や検査があったり、感染を防ぐ為になるべく面会を控える様に言われた。

翔「智?…大丈夫。ちゃんと傍に居るから。もう一人じゃねぇぞ?」

毎日顔を出す俺に、看護師たちは気を遣って病室を出てくれる様になった。

手を握りながら毎日名前を呼び、話し掛ける。
目が覚めた時、"生きてて良かった"と思える様に…
俺はずっと話し掛け続けた。

『失礼します。…すみません、処置に入りますのでそろそろよろしいですか?』

翔「…はい。……智?また明日来るな?……すいません、お願いします」


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