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愛すると言う事…

第5章 episode 5


『はい。……大丈夫ですか?少しはお休みになった方がいいですよ?』

翔「…大丈夫です。ありがとうございます」

『あなたが倒れたら、元も子もないですよ?』

翔「……はい」

点滴を交換しながら、俺より遥かに年上の年期の入った看護師が言い聞かせる様に話してくる。

『大野くんが目覚めた時、あなたが倒れてたら自分を責めてしまうでしょ?…倒れるのは勝手だけど、大野くんの治療の妨げになる事だけはしないで下さいね?』

かなり、キツい看護師だ。
まぁ、智の事を思ってくれてるのは十分に分かるから。

翔「…はい。……すいません」

悪い人ではない。
寧ろ、いい人だ。


ホテルに戻ってシゲに連絡を入れた。

シ『…こっちは問題ないですよ?……智はどうです?』

翔「そうか。…智は相変わらずだな。現状維持ってとこだ」

シ『そうですか。…あ。そっちにパソコン送ったんですけど、届きました?』

翔「あぁ、昨日届いた。…売り上げも確認したよ」

シ『そうですか』

翔「…やっぱり、少しは落ちるな?」

シ『ヘルプとは言え、智の影響は少なからずありますね』

売り上げが落ちたとは言え、智が来るまでと比べたら痛くも痒くもない程度。
それほど心配は無かった。

翔「涼介、相当頑張ってんな?」

シ『そうなんですよ!あいつ、智が休んでから本当に凄くて。…かなり営業してますよ?』

翔「そうか。…後で電話しておくよ」

智、お前の言ってた通りだな。

あいつは智にムカついて嫌ってた訳じゃなかった。
トップに立ちたいって思いが強いばっかりに、目立つ智にある意味八つ当たりをしただけの話。

"相当嫌われてる"と言ったのも、智自身じゃなくてたまたま目立ってチヤホヤされてたのが智だったってだけ。

翔「…涼介か?」

涼『はい。翔さん、お疲れ様です』

翔「お疲れ。…どうだ?最近、かなり頑張ってるみたいだけど」

涼『えぇ、お陰様で♪新規の客が何人か増えました』

翔「そうか。…あんま無理だけはすんな?」

涼『してませんよ?ちゃんと店のルールも守ってますし♪』

声が明るいのは、仕事終わりで酒が入ってるからか?

電話の最中、涼介が智の名前を出す事はなくて、店の状況をただ報告してきた。


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