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愛すると言う事…

第5章 episode 5


光一は苦笑いしながら『あいつらも心配してるんですよ』とフォローして。
『すまない』と頭を下げた俺に、『"ありがとう"の方がみんな喜びます』と肩を叩かれた。


【コンコン】

翔「…はい」

病室で智の腕をマッサージしてた時、ドアをノックする音がした。
俺の返事の後、ゆっくり開いたドアから顔を出したのは…

「「翔ちゃん♪」」

翔「……雅紀、和…」

二人でここに来たのは初めてだ。

二人が店に来たと連絡を受けてすぐに電話した。
ある程度の説明をして、智の状態も今までの事も全て二人には話した。

和は泣いてしまい、雅紀はもっと早く言えと怒った。

和「…大野さん……こんなに小さくなってる…」

翔「細く、だろ?仕方ない、点滴だけだから」

雅「そっかぁ、そうだよね……翔ちゃんも、ちゃんと食べてる?」

翔「まぁそこそこには?」

雅紀が怒ろうとした時、和が『煩い。大野さんが起きちゃうよ』って怒って…

「「……その方が良くないか?」」

和「………あ、そっか」

三人で顔を見合わせて笑った。

本当に久し振りに声を出して笑った気がした。

処置に来た看護師が『楽しそうですね?』って言うくらいだ。
余程だったのかもしれない。

『楽しい雰囲気の方が大野くんもきっと喜びますし、目を覚ますかもしれないですね?』

血圧を計りながらそう言われた。

確かにいつも俺と智だけの空間で、楽しい雰囲気なんて作れるはずもない。

和がそれを聞いて『毎日来る!』と息巻いた。
雅紀は『店どうすんだ!』と怒り、ベッドの傍でわいわいと喧嘩を始める。
看護師がクスクスと笑ってた。

翔「今日は賑やかだな?」

智の頭を撫でて囁いた。
反対の手で握った智の手。

翔「………智?」

ほんの僅か。
見逃しそうな程度。

ピクリと、動いた気がした。

『どうしました?』

翔「……いや、気の所為かもしれないけど…今、手が動いた様な気がしたんですけど…」

和「本当に!?」

雅「マジで!?大ちゃん!」

和も雅紀も智を覗き込んだけど、変わった様子はない。
がっかりする二人に、看護師はクスッと笑った。

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