
愛すると言う事…
第6章 episode 6
この日、午前中はあらゆる検査をされて。
昼を過ぎるまで続いた所為で、空腹感が半端無かった。
『何年も点滴だけだったしな?』って翔に言われて、だからこんなにガリガリなのか…と納得出来た。
病院食は本当に味気なくて。
ばあちゃんの飯が食いたくなった。
…もう居ないらしいけど。
翔「昔は今より口数多かったんだな?」
智「……?…そんな喋んねぇの?俺」
翔「全く。…放っておいたら一言も喋らんな」
智「………」
翔「あはは(笑)無言なのも、何か懐かしい(笑)」
一人嬉しそうな翔が居る。
まだ何一つ思い出せないどころか、俺の中では15歳なのに22歳だと言う現実も全く飲み込めない。
ホストなんかやってたって言うし、見た事もない叔母さん夫婦に金は根刮ぎ持ってかれたらしいし。
智「…ハァ…、マジで訳分かんねぇよ」
翔「そうだよなぁ…訳分かんねぇよなぁ…」
智「………」
翔「ゆっくりでいいよ。…俺は智がこうして生きてて、目覚めてくれただけで十分だ」
智「………///」
やっぱり、頭を撫でる。
事ある毎にこうして頭を撫でる翔。
智「…俺が好きなんだって言いながら、翔も好きなんだろ?」
翔「………」
智「……何だよ」
翔「……初めて名前呼んだな?まぁ、前は"翔さん"だったけど」
俺が目覚めて初めて、翔は昨日からで一番嬉しそうに笑った。
智「……翔、さん?」
翔「いいよ、翔でも。…どっちでも好きなように呼べばいい」
……翔さん…
フワッ…と、一瞬頭の中を何かが過った。
でも、それが何かははっきりと分かんない。
考えれば考える程、軽い頭痛がして。
翔「……智?」
智「…ごめん、何か頭過ったけど…分かんねぇ…ちょっと、頭痛ぇ」
翔「大丈夫か?横になった方がいい。…無理するな?」
智「……ん」
病室を、出て行こうとするのが分かった。
何でか分かんない。
分かんないけど、翔さんの腕を掴んでた。
翔「…?…どうした?看護師呼んで来るだけだ」
智「………いい。…………居て。…ここに…」
言い知れぬ不安。
無意識に掴んだ翔さんの腕。
俺の手が、何故か震えてた。
一人に、してほしくなかったんだ。
