
愛すると言う事…
第6章 episode 6
訳の分かんない言い知れぬ不安が、今の俺には耐えられそうになかった。
翔「分かった。…薬、貰わなくて大丈夫か?」
智「…………いい」
掴んだ腕をゆっくり解くと、翔さんは俺の手を握ってくれる。
『大丈夫だ。もう一人にしねぇよ』と、優しく笑ってくれた。
あらゆる検査をした後、医者は問題ないと俺と翔さんに告げた。
『もう食事も摂れてますし、問題ないでしょうから、退院も可能ですよ?』
翔さんはそう医者に言われて『お世話になりました』と、まるで保護者の様に頭を深く下げた。
退院の日程を二日後に決めた翔さん。
俺に帰る場所はあるんだろうか…
そう思ってても、なかなか口を開けずにいる。
ボーッと窓の外を眺めてる俺に、手続きをして戻ってきた翔さんは俺の後ろに立つと頭に手を乗せ『どうした?』と聞いてきた。
首を振るだけで、やっぱり聞く事が出来なくて。
この先俺はどうなるんだろう…
そんな不安が俺を飲み込もうとしてた。
雅「翔ちゃん♪」
和「…あ!大野さん!起きてる♪」
また見た事ない人が俺の名前を呼んだ。
背の高い方は何故か"大ちゃん"と呼び、小さい方は"大野さん"と言う。
見た感じ、小さい方は俺より年上な気がするけど…
あ、俺22歳か…
首を傾げる俺に、小さい方が抱き付いて来た。
和「うぅ……本当に…俺の事、忘れちゃったんだね…」
智「…あー…えっと……」
翔「和だ。…二宮和也。まぁ智は"ニノ"って呼んでたけど」
翔さんに教えられて『…ニ、ノ?』って呟いた。
パッと顔を上げた彼は恐ろしい程嬉しそうに笑った。
雅「あはは(笑)!和たち、兄弟みたいだね?」
背の高い方が楽しそうに笑うと『雅紀。…相葉雅紀だ』ってやっぱり翔さんに教えられて。
でも彼を何て呼んでたのか分かんない。
翔「そう言えば、雅紀の事名前で呼んでんの聞いた事ねぇな?」
和「本当だ!大野さん、まーくんの事呼んだ事ないかも!」
え?
マジか…
こんなに親しそうなのに?
彼はそんな翔さんたちの話に肩を落とし項垂れてた。
智「……相葉、さん?」
雅「え…何かそれ、嫌だ…」
智「………」
翔「とりあえず何でもいいだろ?…和、そろそろ腕離せ」
未だに抱き付いたままのニノ。
翔さんが突然低い声でそう言うと、ニノががっかりしたように離れていった。
