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愛すると言う事…

第6章 episode 6


ずっと、帰りの車の中で窓の外を眺めてた智。

マンションに近付く頃には、疲れたのか眠っていた。
駐車場に車を停めて、まだ眠ってる智を俺は抱き上げたけど起きる気配もなく。
そのまま部屋まで連れていった。


ベッドに寝かせてドアは開けたままにして。

とりあえずキッチンでコーヒーを淹れた。
部屋の中はすっかり冷えきってる。

この部屋に帰って来たのは、三年ぶりか…

人気がないといくら温かい日とは言え、ここまでひんやりするもんなんだな。
そんな事を思いながらコーヒーを啜り煙草を咥えた。

煙草すらも…三年ぶりか…


今の智は、俺の知らない"智"で。
雰囲気もまったく違うのは、まだ智がおばあさんと一緒にいた頃だからなのかもしれない。

たった一人の肉親を亡くして智は感情を表に出さなくなったんだと、改めて実感する。


いろいろとこの三年を思い返せば、あり得ない程壮絶だったなぁと…物思いに耽っていた時。

携帯がポケットの中で震えた。

翔「……はい」

シ『翔さん、お疲れ様です』

翔「…シゲ。お疲れ」

シ『もう自宅ですか?』

翔「あぁ、さっき着いた」

シ『そうですか、お疲れ様でした。…例の件ですけど…』

翔「…どうなった?」

シ『はい、やっと全部片付きました。全額は無理でしたけど、2/3は回収出来ましたよ。…後、"あいつら"ですけど……まぁ、生きて行けるといいですね♪』

翔「ふはっ(笑)!……怖ぇ。内容は聞かないでおくわ。…悪かったな?」

シ『…いえ♪楽しかったですよ?智をここまでした奴らを追い詰めるの(笑)』

シゲの声が、楽しさの裏に憎悪が見え隠れしてる。
こいつを敵に回すのだけは、やめようと強く思った。

ゆっくり休んでいいと言われてその言葉に少しだけ甘えさせてもらう事にして、シゲとの電話を切った。


ふ…と、気配を感じ振り返ると智が立ってた。

翔「悪い、起こしたか?」

智「…………何……ここ…」

翔「あー…お前と俺が住んでたマンション。入院する前の」

智「………」

固まる智は、多分驚いてる。

おばあさんと暮らしてた家がどんななのかは知らないけど、驚いてるとこ見るともっと狭い場所だったのか?

まぁ…

中3の智なんだと考えれば、それも仕方ないか。


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