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愛すると言う事…

第7章 episode 7


智「……俺、も?」

翔「行かねぇの?」

智「………面倒臭い…」

翔「食うもんねぇだろ」

智「……いいよ。…コーヒーあれば」

眉間に皺を寄せ、最終的には鬼の様に怒り露に無言で攻撃を始めた。
多分。
今まで点滴だけで生きてきた俺が、"ガリガリ"な身体なのを心配してくれてるんだとは思う。

思うけど…

こんな朝早くからわざわざコンビニ行くのは死ぬほど面倒だ。

智「………米、あるから…」

翔「行くぞ」

物凄い圧力掛けられた。
逆らえない何かを、この人は持ってる。

滅多に見ないこの雰囲気に、俺が"嫌だ"と言える立場にはなく。



智「…………こんなに食えねぇだろ」

コンビニまで歩いて来る羽目になる。
しかも、カゴにはあり得ない程の量のおにぎりやパン、惣菜を次々に入れて。

翔「腹減ってんだ」

そう言ったけど、さすがにこの量はないだろ。

俺はレジに向かう途中でカゴの中身の半分を元の棚に戻して行った。


翔さんはコンビニまでの行き帰り、本当に嬉しそうに歩いてた。
そんな背中を見ると、申し訳ない思いもあったけど…

"生きてて良かった"

少しだけそう思える。
涙を流してまで安堵してくれたこの人を、もう二度とあんな思いをさせないでおこうと、秘かに思った。


結局俺が食える量なんて、たかが知れてて。

ずっと…三年も点滴のみで何も食ってなかった俺がまともに飯なんか食えるはずない。

翔「雅紀の店であんなに食って飲んでたのに…」

そんな事言われたって、それは"俺"じゃなかった訳で。

智「………俺じゃねぇし」

翔「まぁ、そうだけど…」

パン一つが精一杯だった。
コーヒーを啜って煙草を咥えた俺をジーッと見つめて来る。

智「………何?」

翔「…いや。……やっぱ、その方がいい。安心する」

ふわりと微笑んだ翔さん。

"15歳の俺"は翔さんにとって新鮮ではあったらしいけど、やっぱりそれは"俺"じゃなかった。
『やっと帰って来た』って、嬉しそうに笑った。


『…店は?』と聞いた俺に、翔さんは暫く休んでゆっくりしていいと言う。
シゲさんもマネージャーもそう言ってくれてると教えてくれた。


昼は今朝買った残りを食わされ。
やっぱりおにぎり一つが精一杯。

それでも『食わないよりはいい』と頭を撫でた。

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