テキストサイズ

愛すると言う事…

第7章 episode 7


この日、翔さんはずっと俺の傍を離れなかった。

ソファに居ても、ピッタリと隣に座る。
体力が戻ってない俺が横になれば、膝枕までしてきた。
『……いい』と断っても、頭を押さえ付けられて仕方なく抵抗をやめる。

何をするにも、何処へ行くのもずっと俺を気配で追い、気にしてて。
違和感…とはまたちょっと違うけど、何となく違う翔さんに戸惑いが消せずに居た。


何だか翔さんが別人の様だった。



夕方になると翔さんが『雅紀んとこ行こう』と言い出し。

彼らにもまた、心配を掛けたと聞いてたからお礼を言わなきゃなんないと、俺はすぐに腰を上げた。

ただ…

歩いて店まで向かう途中で聞いたニノの事が、物凄く気掛かりで。
急に足取りが重くなった気がする。

雅「いらっしゃい!……翔ちゃん♪」

和「翔ちゃん、いらっしゃい。……大野さん♪」

それでなくても、三年前もやたら懐いてたニノ。
俺を見つけた途端、飛び付いてきた。
ふらついた俺。

体力の無さを実感したと同時に、やっぱりそうなったか…と頭を抱えたくなった。
まだ俺が"15歳の俺"だと思ってるニノに、翔さんは無理矢理腕を剥がして俺を引っ張った。

…また、ふらついた俺。

いい加減にしてほしい。
別人の様な翔さんだけでも今は手一杯なのに、ニノまでは手に負えない。

雅「ほら!和!…いい加減にしろ。大ちゃんが困ってんだろ」

和「狡いよ!翔ちゃんはいつも大野さんと一緒に居られるじゃんか!」

雅「和。………翔ちゃんも。…もう大ちゃんは"戻った"んでしょ?困らせたら可愛そうだよ」

店主雅紀が、誰より大人だった。

ニノは不貞腐れながらも彼に逆らう事は出来ないのか大人しくなり、俺の腕を掴んでた翔さんに視線を向けると…戸惑いと困惑、情けなさ全てを混ぜ合わせた様な複雑な表情を浮かべてた。


二階のいつもの個室に上がった俺たち。

比較的空いてる今日、店主雅紀も個室に入ると4人で乾杯をした。

翔「……情けねぇよな…」

時々下に降りて行ってはすぐに戻って来る店主雅紀。
何杯目かのビールを飲み干した翔さんがぼそりと呟いた。

店主雅紀はすぐに理解したのか『仕方ないよ』と優しく笑うと肩を叩く。
ニノは首を傾げてた。

翔「もうちゃんとここに居るのに……また居なくなるんじゃねぇかって…そう思ったら離せなくなる。…マジで、カッコ悪ぃ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ