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愛すると言う事…

第7章 episode 7


『ごめん…』と呟く俺。

翔「悪い。責めてる訳じゃないし、お前の所為でもないんだ。…ただ…俺が、『俺ってこんなだったのか?』って思ったらちょっと、な?」

情けなさそうな翔さんは、弱々しく。
ボソボソと、思いを溢す。

和「いいじゃん♪ずっと好きなのかも分かんない女たちと付き合ってた翔ちゃんがさぁ、そこまで大野さんを想ってるって事でしょ?ねぇ?」

雅「うん、いいと思うよ?人を好きになるって、情けない時もあれば強くなれる時もある。そう言うもんだよ♪」

何だか物凄い恥ずかしかった。
別人の様な翔さんの原因は俺だってのは何となくそうなのかと思ってはいたけど…

雅「…まぁ、大ちゃんはもう少しだけ言葉にしてあげたら、翔ちゃんが安心するかもね♪」

店主雅紀が、出来もしないウィンクを俺に向けてきた。

出来る訳ねぇ。
もう一生分の勇気を使い果たした。
あれが俺の精一杯だ。

俯きビールを煽るように喉に流し込んだ。
翔さんが隣で笑ってた。


珍しく酔った翔さんはやっぱり俺にピッタリくっ付いてウトウトしてて。
反対側でニノが、何故か俺の膝で寝てる。

雅「ごめんね?大ちゃん」

智「………いや、いいけど」

雅「こいつ、誰かにくっ付いてないと不安なんだ。…ずっと、一人みたいなもんだったから」

店主雅紀が愛おしそうにニノを見つめて『親も"申し訳ない"っていつも言ってる』と苦笑いする。

雅「高校に入った時も、友達なんて居なかったみたいでさ?たまたま屋上行ったら大ちゃん見つけたんだって」

智「………姉ちゃん、居るって…」

雅「あー、うん。姉ちゃんはいつも家に居なかったみたい。帰りも遅かったし、詳しくは聞いてないけど…あんまり家に帰ってなかったみたいなんだ」

智「…へぇ」

雅「屋上に居た大ちゃんが、死ぬほど無口な人って知ってて話し掛けたら、やっぱり無口で返事もしないからずっと一人で勝手に喋ってたらしい。…嫌がる素振りも無かったから、嬉しかったんだって♪」

『ただ"誰かと居る"って事が安心するっていつも言ってた』って、店主雅紀がニノの頭を撫でてそう言った。

"誰かと居る"って事に安心する気持ち、今なら分かる気がする。

翔さんに会うまではそんな事思わなかったし、寧ろ一人で居る方が楽だった。


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