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雪に咲く花

第24章 きずあとが癒えるまで

「卒業後のことだけど、俺、実はさ……」
昼休み弁当を食べながら、颯人が言った。
「警官になりたいと思っているんだ」
「えっ!保育士目指していたんじゃなかったの?」
雪斗が、颯人の告白に目をまるくする。
「そのつもりだったんだけどよ。お前や亘兄の事件もあったし、歩も、あの顔だから、しょっちゅう怪しいやつに絡まれるし、その辺にいる悪いやつ取っ捕まえたいと思ったんだよ」
「颯人は、保育士になって施設を継ぐのかと思ってた」
「ついこの間まではな。もともと、保育士になりたかったのは、あそこにずっといたいからだったんだよ」
颯人のいる施設は、高校卒業したら、自立して施設を出ていかなければならないことになっている。
身内のいない颯人にとって、施設の保育士たちも、子供達も家族同然なのだ。
それに、颯人は強面の外見に似合わず、子供好きだ。
保育士になりたかったのは、この施設の仲間達と離れたくなかったということもある。
また、見なし子になった自分を育ててくれた園長や保育士達の恩に報いて、この施設を守っていきたいと思っていたのだ。

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