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雪に咲く花

第41章 雪に咲き乱れる花

クリスマスイヴの夜、世間はそれぞれに幸せなひとときを過ごしている。
「新しいスタートと雪斗の19歳の誕生日を祝って乾杯!」
雪斗と亘は新品の食卓の椅子に座り、シャンパンで乾杯した。
雪斗が19歳の誕生日を迎えたクリスマスイヴの日に、二人は新しい新居に移ったのだ。
もともと、亘が記憶を失う前から予定していたことである。
「亘があの時、悠希君にそのまま住んでもらうって言ったのは、こういうことだったんだね。俺が話を最後まで聞いていれば亘が事故にあうことだってなかっただろうな」
雪斗は亘から同棲を持ちかけられたときに、初めて悠希のことで自分が誤解をしていたことを知った。
「それをいうなら俺だって同じさ。記憶にはないが、雪斗のことを信じなかったらしいからな」
二人は、お互いに小さなすれ違いから、信頼するということを忘れていたのだ。
少しでも相手を信じる気持ちがあったなら、ここまで距離が開くことも、傷つけあうこともなかっただろう。
「まあ、過ぎたことは考えても仕方ない。今は、こうして戻ってこれたわけだし、これからのことを考えよう」
「そうだね。とにかく、食べようか」
雪斗が食卓に並べられたご馳走に、目を移した。

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