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ギムレット

第12章 アメリカン・レモネード 忘れられない

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今日、会える? 会いたい
大丈夫だったら、先に部屋で待ってて
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タクからメールが届いた。


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大丈夫。仕事終わったら
タクの部屋で待ってる
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その日、私は客のアフターに付き合ったために、予定よりもかなり遅くなってしまい、タクの仕事が終わる時間帯にもうなっていた。


タクの家へ向かう途中、薄暗い裏通りを歩く彼の姿が見えた。



──── あっ!タク



ほんの少し、街灯の明かりが照らす場所に彼が歩を進めた時に、その横には女性の姿があった。



…………⁉



目に飛び込んできたのは……
女性に腕を回して抱き寄せ、激しいキスをしている二人の姿。




そう……分かってた。

分かっていたじゃない。



彼は、私以外の誰かも ”抱くよ” そうちゃんと宣言していたじゃない。


私はそれを分かって……一緒にいたはずじゃない。



なのに……



どうしてこんなに胸が苦しいの?

どうしてこんなセンチメンタルな気持ちになるの?


大人の関係を、体を求め合うだけの関係でも……いい。なんて。

決して嫉妬なんてしない、物分かりのいい女として振舞って……


自分だって、タクとシュウを失いたくない。なんて
自分勝手なこと言っているくせに……



その女性(ひと)誰? タクの大切な人なの?

嫉妬?この感情は嫉妬なの?


私は……タクにとって、どんな存在なの?


知りたい。聞きたい。



もう……自分が分からない。


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