じゃん・けん・ぽん!!
第9章 数には数を
それを手短に話すと、
「とにかく、下駄箱の交換に応じたくない理由が会長さんにはあるんですね」
と小柄な後輩は言った。
理由に踏み込んでこないのは、気遣いだろうか。裕子には測りかねる。
「でも、だとしても、そんなに落ち込む必要はないじゃないですか。下駄箱の交換なんて、そんなに要望が出ているわけでもないんですよね」
「それがそうでもないの」
「え」
晃仁は目を向いた。意外だといった様子だ。
「実は」
話そうか話すまいか迷ったが、裕子は話すことにした。隠したとしても、どうせいつかは知られると思ったからだ。
「これ、こんなに要望が出てるんだよね」
裕子は鞄の中から、紙束を取り出した。生徒会で提出された、下駄箱を交換する要望を出している生徒の名簿だ。
「こんなに」
晃仁は驚きながらも、その紙束を受け取ると、さっそく中身に目を通し始めた。
「正確には数えてないけど、ざっと見た感じでも全校生徒の半分は下駄箱の交換を希望しているの。だから、さすがに無視はできなくて」
「確かにこれだけの人数となると・・・・・・。でも」
中身を見ながら、晃仁は何かを考えているらしかった。語尾の〝でも〟が気になる。
「でも――なに」
まるで小学生のような後輩に、裕子はつい自分の声が優しくなっていることに気づいた。
「でも」
と晃仁はもう一度呟いた。
「これなら――」
そして紙束から顔をあげて裕子の顔を見ると、
「何とかなりますよ」
と言った。
「え」
信じられないひと言だった。これだけの人数を退ける方法があるとは、裕子には思えない。
「なんとかって、どうするの」
裕子は体を回転させて、隣に座っている晃仁に体を向けた。そんな方法があるなら、今すぐにでも知りたい。
「その前に、まず、この名簿の中身をちゃんと見てみましたか」
晃仁は、きちんと説明しようとしているのか、それとも焦らしているのか、すぐには答えを言わなかった。
「いや――」
しっかりとは見ていない。ただ、これだけの人数からの突き上げが来ているのだな――と思っただけだ。そう言うと、
「ちょっと見てください」
と晃仁は言って、紙束を反対に持つと、中身を開いて裕子に見せた。それを裕子は眺める。
「とにかく、下駄箱の交換に応じたくない理由が会長さんにはあるんですね」
と小柄な後輩は言った。
理由に踏み込んでこないのは、気遣いだろうか。裕子には測りかねる。
「でも、だとしても、そんなに落ち込む必要はないじゃないですか。下駄箱の交換なんて、そんなに要望が出ているわけでもないんですよね」
「それがそうでもないの」
「え」
晃仁は目を向いた。意外だといった様子だ。
「実は」
話そうか話すまいか迷ったが、裕子は話すことにした。隠したとしても、どうせいつかは知られると思ったからだ。
「これ、こんなに要望が出てるんだよね」
裕子は鞄の中から、紙束を取り出した。生徒会で提出された、下駄箱を交換する要望を出している生徒の名簿だ。
「こんなに」
晃仁は驚きながらも、その紙束を受け取ると、さっそく中身に目を通し始めた。
「正確には数えてないけど、ざっと見た感じでも全校生徒の半分は下駄箱の交換を希望しているの。だから、さすがに無視はできなくて」
「確かにこれだけの人数となると・・・・・・。でも」
中身を見ながら、晃仁は何かを考えているらしかった。語尾の〝でも〟が気になる。
「でも――なに」
まるで小学生のような後輩に、裕子はつい自分の声が優しくなっていることに気づいた。
「でも」
と晃仁はもう一度呟いた。
「これなら――」
そして紙束から顔をあげて裕子の顔を見ると、
「何とかなりますよ」
と言った。
「え」
信じられないひと言だった。これだけの人数を退ける方法があるとは、裕子には思えない。
「なんとかって、どうするの」
裕子は体を回転させて、隣に座っている晃仁に体を向けた。そんな方法があるなら、今すぐにでも知りたい。
「その前に、まず、この名簿の中身をちゃんと見てみましたか」
晃仁は、きちんと説明しようとしているのか、それとも焦らしているのか、すぐには答えを言わなかった。
「いや――」
しっかりとは見ていない。ただ、これだけの人数からの突き上げが来ているのだな――と思っただけだ。そう言うと、
「ちょっと見てください」
と晃仁は言って、紙束を反対に持つと、中身を開いて裕子に見せた。それを裕子は眺める。