テキストサイズ

え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第1章 「僕を、きみの専属クリフェラ係にしてほしい」

 わたし――高砂詩菜《しいな》・十七歳高等部二年生の通うグロリア=ストゥプラ学園は、いわゆるお金持ちの名門校である。
 なぜ庶民のわたしがこの学園に通っているかというと、わたしは中学生のとき事故で両親を亡くした。そこで、母親の兄が夫である九重家――九重家の当主は代々女性で、伯父さんは当主の配偶者にすぎない――に引き取られた。

「霧島先生もこのストゥプラのOGだものね。女子たるもの、クリフェラ係の一人や二人持っていて当然という考えなのよ。私は、蓮路《れんじ》さん一人で充分だけども」

 ランチをつつきながら、水瀬《みなせ》依里子《よりこ》が言う。依里子は、高等部からの入学のわたしにとても良くしてくれる親友なのだ。

「わたしの通ってた公立中学じゃ、クリフェラ係を持ってる女子は少なかったよ? それも大体が交際相手だったし」

 そうなのだ。霧島先生はまるで常識のように言うけれど、クリフェラ係を持てる、というのは上流階級の幸運にすぎないのだ。

「でも! 私だって女の子はクリフェラ係を持つべきだと思うわよ? 女の子はえっちな生き物でしょう。その欲求を満たさずして、勉学に励めると思えて?」

 依里子がジュースの紙パックを握りしめて熱弁する。
 結局、依里子だって根っからのストゥプラ育ちなのだ。

「九重くんのお母さま――当主はどうお考えなのかしら。何故詩菜にクリフェラ係をお世話してくれないのかしら。詩菜、辛く当たられたりはしてないのよね?」
「すごく優しくしてもらってるよ? 引き取って貰えただけでも大感謝だし」
「不思議よね。九重財閥はこの学園の一番の出資者で、その理念にも深く関わっている筈なのだけど」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ