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え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第8章 信じる気持ち

「……母さん」

 夕謡は夢芽ちゃんの背中に手を回し、伯母さまを見据えて言った。

「僕は男だけど、夢芽の気持ち、わかるよ」

 そして夕謡は、こう続けたのだ。

「僕だって、詩菜以外のクリフェラ係はしたくないし、詩菜にも僕以外からのクリフェラ奉仕を受けてほしくない。それは――そんなに我儘なことかな。母さん」

 わたしは、息を止めて夕謡を見つめた。
 夕謡のゆるぎない口調に、伯母さまもたじろぎを見せる。

「夕謡、あなた……」
「夢芽は次期当主だから、結婚相手を見定める必要があるのもわかる。だけど今は、夢芽の気持ちを尊重してやってほしい」
「……」

 わたしは静かに語る夕謡を食い入るように見つめた。
 夕謡にとってクリフェラ係契約とは、もしかしたら恋人関係以上に重要なものなのかもしれない――その可能性に思い至った。

「とりあえず、朝っぱらからこんな争いをするのはやめようよ。みんな、学校遅刻しちゃうよ」

 夕謡の言葉に伯母さまは逡巡するように瞳を巡らせたが、やがてこう言った。

「……そう、ね」

 とりあえずこの話は打ち切りとなり、わたしたちはテーブルに着き朝食を摂ったのだった。



 その日の昼、わたしは何も言わず、いつものように夕謡からのクリフェラ奉仕を受けた。そして夜も、次の日も、また次の日も。

 ――僕だって、詩菜以外のクリフェラ係はしたくないし、詩菜にも僕以外からのクリフェラ奉仕を受けてほしくない――

 相変わらずわたしには触れさせてはくれないし、キスもくれないけれど、伯母さまに言い切った夕謡の心を信じてみよう――そう思ったのだった。

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