テキストサイズ

え?元アイドルのお従兄ちゃんがわたしのクリフェラ係ですか!?

第10章 想い、重ねて

 わたしたちが向かった「ルーム」――それはレンタルクリフェラルームの略称である。
 えっちな衝動を我慢できない女の子たちのために、街中にはレンタルクリフェラルームが点在している。なかでも、グロリア=ストゥプラ学園の徒歩圏内には、ストゥプラ生向けに多数のルームがあるのだった。

 ルームでわたしたちが借りた部屋は、童話「いばら姫」をモチーフにした部屋だった。部屋は薔薇のオーナメントで飾り立てられ、その真ん中に少し小さめの天蓋付きベッドが鎮座している。

(なんだか、SEXもできてしまいそう……)

 実際、それは禁止されてはいないのだ。夕謡《ゆうた》はそんなことはしてくれないだろうけど……。

「詩菜《しいな》……かわいい。ほんとうにお姫さまみたい……」

 ベッドに腰かけたわたしに、夕謡が陶然とささやいた。

「もっとも、僕にとっては詩菜がただ一人のお姫さまなんだけどね」
「夕謡……」

 わたしは夕謡を見上げた。視線と視線が絡み合う。夕謡の少し色の薄い虹彩から目が離せない。――そして、もうその衝動を堪えることができそうになかった。

(キスしてほしい、夕謡――)

 けれど夕謡は、今まで一度としてくちびるにはキスをしてくれたことがない。彼を信じると決めたけれど、それでもこの体の疼きが、深い衝動がわたしを苛む。

 どのくらいそうして見つめ合っていただろう。夕謡がわたしの肩にそっと両手をかけ、そして言った。

「詩菜……キス、してもいい?」

 わたしは驚きに目を瞠いた。まさか、夕謡がそんなことを言いだすなんて。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ