
二人のキセキの物語 MN
第10章 出逢いの二人10 ニノ
でも、仕事はともかく
女の子の事...恋愛の方はなかなか思うようにはいかなかった
自分の気持ちは伝えた
笑わずに真剣に聞いてもらえた
その上で きちんと断られたんだから もう思い残すことは無い
その筈だったのに
「いいぞ、和也。最近演技に艶が出てきた」
思いがけず 褒められた
俺の芝居に艶が出たとしたら それは間違いなく
まだ消化しきれていない監督への想い
胸の中に渦巻く色々な感情のおかげだ
監督の俺を見る目は柔らかく
ただ単に役者としての自分を見ているだけだとわかっていても
心の奥の方から湧いてくる喜びを抑えられない
俺に出来る事は 只、口にしない事だけ
自分の気持ちを断ち切るなんてことは
到底無理だと思い知らされた
