
触って、七瀬。ー青い冬ー
第11章 薔薇の蜜
七瀬は恐れていた
だから、優しく誘う
七瀬はきっと、
俺を見捨てることはできない
俺から目を逸らすことはできない
君は弱くて、優しい獲物だから
「キス、して」
高梨はそう言って僕を見た
その目があまりに鋭くて
でも、その声はあまりに甘くて
僕を誘惑する
「…ふざけてるの」
また遊んでいる
僕をおもちゃにしている
そうわかっているのに
僕は、ようやく翔太さんという人を見つけたのに
それはこの人から離れるためで
この人を忘れるためで
高梨には、他の人がいるのに
僕達は友達、そう言ったのに
「七瀬」
僕は抵抗なんかできない
そんな風に見つめられたら
「…ん」
僕は唇を重ねてしまった
また罠にかけられた
どういうつもりなんだ
僕を弄んで、苦しめて
僕は必死に忘れようとしているのに
離れようとしているのに
君のために
なのに、そうやって誘うの
今度のキスには、罪悪感が加わって
甘みがどんどん深くなった
こんなことはしてはいけないのに
もっと欲しくなって
いけないことほどしたくてたまらない
手に入らないものほど
ほしくてたまらない
高梨の熱いキスが僕を朦朧とさせた。
唇は首元に走った
「あ、ぁ…」
息がかかって、ちゅ、ちゅ、と何度も肌にキスが降り注いでいた
「これ、誰の」
覚えのある、紅くなった肌
翔太さんの印
高梨は歯を立てた
「や、ぁ、あ」
鋭い歯が、肌をつー、と撫でる
「誰の?」
息が熱くて
身体はもう、高梨のものだった
「しょうたさん、の」
翔太さんとのセックスは熱しやすく
冷めやすい
だからすぐ、もう一回する
でも、熱すぎて、火傷して
僕は意識を失ってしまう
「吸われて痛かった?」
高梨は耳元で低く、甘く囁く
「っん…ん」
それだけで身体が震えてしまう
「痛いの気持ちよかったんだ」
知らない、こんな高梨伊織は
意地悪なのに、甘く誘惑する
「ち、が…ぁっ、あ」
