
触って、七瀬。ー青い冬ー
第14章 神の告白
《言うな…誰にも》
《どうしてそんなに怒るの?
貴方に関係ないことじゃない。
今日は私達のクリスマスでしょ》
《お前がここまで腐った人間だとは
思わなかったよ。
少なくとも俺は、お前が可哀想だと思ってた。でも違ったな》
《あの子は何だって持ってるじゃない。
私だって持ってるはずだった。
私は貴方の愛だけが欲しかった。
それだけで良かったのに
それなのに貴方はあの子を選んだ》
《あいつは何も持ってねぇよ。
家族に愛されることも自分を愛することも
希望を持つことも知らない。
誰かに愛されていることも知らない。
努力しないと愛されない
自分はここにいてはいけない人間だ
そう思い込んでる
だからせめて迷惑をかけないように
顔色を伺って敏感に相手の変化を見て
全部に気を遣って
それを続けるのが苦しくなって
一人を選ぶようになって
そんな風に逃げたんだから
愛されないなんて当たり前だって言う
確かにあいつは恵まれてた
でも何も知らなかった
教えてもらえなかったんだ
両親も親戚もひどい奴らだった
普通の人間でも苦しいだろうに
苦しいって言えないあいつならなおさらだ
頼れる人間もいなかった
一人で生きるのは辛かっただろうな
でも誰もあいつの心の声に気がつかない
あいつは隠すのが本当に得意だから
迷惑をかけるくらいなら我慢する
苦しくてもそれで周りが平和なら幸せだ
自分を犠牲にしても構わない
そんなことを平気で考えるような人間だよ
その人間を不幸にして満足か?
お前は満足だろうな
自分さえ幸せなら満足だろうな
自己犠牲は自己満足だもんな、
お前の知ったことじゃないよな
一人を選んだ人間は
一人にしても構わない
そんな世の中だよ
お前だけじゃない
みんな必死に生きてんだよ
だから苦しんでる奴みんなに手を差し伸べるなんて無茶だ
どんなに気を配ったって無理だ
でもあいつはそれをやろうとした
誰も傷つけないように生きてきた
誰も傷つかなかったんだろうな
あいつが
あいつの苦しみに気づかない奴らの
代わりに傷ついてきたおかげでな
それを知らないでお前みたいな奴が
あいつを陰で好き勝手貶して
何でも持ってるとかほざきやがる
頭の腐った奴らがな》
