テキストサイズ

本気になんかならない

第26章 趣味:和歌

いつからか、ぼけっとしていた俺の耳に、ふたりの声が通りすぎる。

「よくわからないんだけど
タマはふたりの愛猫だったのか?」

「タマ?どうしてここで猫が出てくるのよ?」

「タマノオって、タマのしっぽだろ?
猫飼ってんのは大家さんには秘密ってことだろ?
しっぽ長くなったら見つかって殺されちゃうもんな。
だから、成長するなタマ、耐えろ!って意味だろ?」

「アンタはさっきから、何を聞いていたのよ?」

「"タマの尾"じゃなくて、"玉の緒"よ!魂よ!
内親王が店子なわけないでしょ!」

「猫の名前に辿りついただけでもほめろよ」

「なんでよ?」

「あのな、男がタマって聞いて、すぐに思いうかべるのは決まってるんだ。
俺、タマノオって…。

いえ、何でもありません」

副部長に冷たく凝視された佐倉は、舌をペロっと出した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ