テキストサイズ

本気になんかならない

第27章 熱

「もひとつ言うとね、
打開の策ってさ、必死になって考えるときよりも、
空気になったみたいに一息ついてただよってるときのほうが見つけやすいんだよ。

見渡して、気の向いた方向に行ってこい。
大丈夫、お前の力量は俺が保証する」

そう言って、串にさしたリンゴを1切れ渡してくれた。

保証する?こんな俺でも?

だけどそうだよな。
空は俺の知ってるだけでも、とほうもなく広いんだ。

思いつめるとどんどんと、周りが見えなくなって
ひとつの思いにすがってしまっていた。

彼女が傍にいてくれることを望む俺だけど
それが俺のすべてじゃない。

黄色っぽく化けたリンゴをシャリっと噛むと
爽やかな香りと甘酸っぱい味が広がり、
美味しいと感じる自分を誇らしく思った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ