Memory of Night
第11章 罠
ここに運び込まれた時には、まだ腕に感覚があった。注射針が刺さったままの場所からの鋭い痛みと、腕全体の筋肉が腫れ上がる突っ張るような痛みが。
だが、徐々に痛みは薄れ、鉛のように重くなった。肩から下が、自分の体ではないかのような錯覚を覚える。
神経を麻痺させる薬というのは、どうやら本当らしい。
腕から広がり、右半身が痺れ始めていた。
だが、使い物にならないのは右腕だけ。骨にひびでも入っているのか、左足はひどく痛むが歩けないほどではない。
どうにかして逃げ切れないかと、宵は思考を巡らせた。
「――は。無駄な悪あがきはよせよ」
それがわかったのか、男は吐き捨てるように言った。
「逃げられるわけないだろう? 仲間が六人もいんのに」
その言葉と共に、後方を見渡す。金髪を含め、不良たちは興味津々の様子で宵と小柄な男のやりとりを見つめていた。
「それに右腕、もう動かないだろ? あんたに打った毒薬、一応本物らしいからね。……大丈夫。注射器の中身は薄めてあるし、あんたに弾かれちまったから、致死量には遠いよ。だけど」
一旦言葉を切り、口元の笑みを深めた。