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Memory of Night

第14章 聖夜


 晃は苦笑した。

 宵の瞳があまりに挑戦的だったから。

 お礼の言葉を口にしているにも関わらず、なんだか喧嘩を売られているような気分になってしまった。


「――で?」


 晃は宵の頬に、軽く舌を這わせた。

 びくっと体を震わせる宵の耳もとに唇を押し付け、囁くように言う。


「俺に抱かれること、覚悟して来たんだろ?」

「なんの……こと?」

「そうやってとぼけるつもり? 明ちゃんからの伝言、受け取ってない?」

「……」


 宵は無言。その沈黙は肯定と取ることにした。

 晃は声をわずかに低くした。


「そうやってシラを切るとまた縛っちゃうよ。今度はもっとマニアックな縛り方で」

「なんだよマニアックな縛り方って」

「さあ? それはその時のお楽しみ」


 晃は笑う。

 どうせロクなものじゃないことだけはわかるから、それ以上は聞かなかった。


「……抱くにしろ縛るにしろ、その腕じゃ無理だろ?」


 宵は固定されたままの晃の左腕を見つめた。


「平気だよ。もうほとんど治ってるし」


 なんでもないことのように言いながら、晃は左腕の肘から下辺りに巻かれている包帯を取ってしまう。

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