テキストサイズ

Memory of Night

第14章 聖夜


 太くて長い晃の指。それに舌を絡めると、今度は晃の指が宵の舌を挟む。

 舌を捕まえられるのが嫌で、宵は晃の人差し指を軽く噛んで離させようとした。

 驚いたような顔をして、晃が指を離す。


「まったく。可愛げがないな、君は」


 呆れ顔でそうつぶやきはしたものの、すぐにその顔が笑みに変わる。

 目元を細め、愛しげに見つめられて思う。


(いつからだっけ……?)


 晃が独占欲からでらはなく、本気で自分を求めるようになったのは。それを痛いほど、感じることができるようになったのは。

 宵は目を閉じた。晃の触れてくるすべてが優しい。

 だったら自分は、いつから晃を好きになっていたのだろう。それこそ考えてもわからない。

 気持ちの変化はいつだって曖昧で、綺麗に線引きすることなんてできなかった。

 体中に降る唇が、宵の思考を現実に引き戻していく。

 宵は瞳を開けた。再び唇にキスされた。

 腰を振るスピードが、徐々に速さを増していく。

 いつから好きになったのかなんて、どうでもよくなった。

 重なり合った晃の体温だけが本物で、すべて。

 それで十分だった。


「あ……、あぁ……っ!」


 熱い吐息が夜に溶けていく。

 思考もなにもかも剥ぎ取られてしまいそうだった。

 二人はそれからはひたすら、お互いを求め合うことだけに没頭していった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ