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Memory of Night

第5章 玩具


 宵は激しい雨音で目を覚ました。

 気付けばそこはベッドの上だった。鼻につく消毒液の匂い。


(ここは……)


 辺りを見まわして、すぐに保健室なのだとわかった。

 外が光る。少し遅れて雷鳴が響く。どうやら、夕立らしい。


(俺……またアイツに運ばれたのか)


 これで、一体何度目だろう。

 体のベタつきもほとんどない。体操服も、自分が着ていたものとは違っていた。肌触りがなんとなく違うし、何よりぶかぶかだ。サイズが違う。

 保健室に常備されている予備のものだろう。

 全て晃の仕業に違いない。


(余計なことばっか……)


 やることをやったのなら、とっとと帰ってしまえばいいのに。

 起きたら自分で帰るし、わざわざ保健室まで運んだり、服を着替えさせてくれなくたっていい。そんな優しさ無意味だ。

 そう思った時だった。

 ドアが開く音がした。すぐにカーテンの向こう、黒いシルエットが映る。薄暗い部屋の中で、うっすらと映る影を宵は見つめた。

 そうして、ベッドの上で体を起こす。体に痛みが走ったけれど、構わず起き上がった。

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